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 高校二年生へと進級した同級生たちは、どこか浮き足立って見える。一年間お世話になったこの黒板の僕らへの最後の仕事は、クラス分けの名簿を張り出すことだった。クラス分けに一喜一憂する同級生が去りきってから、自分の名前を探す。二年四組の名簿に、僕の名前はあった。廊下に出てから、この教室を含む二階全体を見渡す。すぐに踵を返し、三階にある二年四組の教室を目指した。


 これから一年間お世話になる教室でも、新しいクラスメイトが浮き足立っている様子だった。一年生の頃から出来ていたであろうグループで賑わっていたり、近くの席に居る人に話しかけたりと色々だけど、僕はそのどれにも当てはまることはなかった。静かに自分の席につき、文庫本を開く。推理小説は一番の暇潰しになるから嫌いじゃない。からくりに委ねていると、どんな時間も勝手に過ぎていく。それに何より楽だ。きっとこの一年も、こんなふうに過ぎていくのだろう。



「あの、ええと、加口くん」

不意に名前を呼ばれ、はっと文庫本から視線を剥がした。

「えっと、はい。加口……ですけど」

「やっと気づいた。はい、プリント」

ようやく状況を理解した。僕は前の席から回ってきたプリントと、僕の受け取りを待つ彼女の存在に気づいていなかったらしい。

「ごめん、気づかなくて。ありがとう」

「……律儀だね」

彼女はそう言いながら僕にプリントを渡すと、自分の席に向かい直して文庫本を開いた。その間、彼女の短めの髪が揺れていた。彼女が残した台詞を心の中で反芻しながら、僕もまた、文庫本に視線を戻した。

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