第68話「躁でもあり鬱でもある」
それから少しの間考えて続けたが、浮かんでくるのは同じようなことや荒唐無稽なものばかり。足りない頭と情報の限界を知った僕は、リスクを犯さなければならない現状を痛感しただけだった。
(虎穴に入らずんば虎児を得ず。と言っても晒されるリスクがでかすぎる……)
今までのことを思うと別に死んだっていい。だが人族に捕まれば筆舌に尽くしがたい苦痛を味わい尽くす、それは嫌だ。それにダンジョンコアの生成リストには前世の利器が並んでいる。もしこれを乗り越えれば快適な生活を、今までの苦渋すら報われる日々を送れるかもしれない。
(そうだ、古いダンジョンは遥か昔から存在していると聞く。魔族の言う”遥か昔”だ、拮抗状態に持ち込めれば悠々自適に暮らせるはずなんだ……)
もちろん維持する上での困難もあるだろう。だが存在の仕方によっては物資や貴重な素材が得られる場所として、人族からも魔族からも重宝されるはずだ。
(……ようやく巡ってきたチャンスなんだ。成せば莫大な利権を得ることができる、多少のリスクがあるくらい当然だ。勝手に救われて幸せになることなんてない、僕は知っているだろう?)
この異世界に生まれて200年、魔族に寿命があるかも分かりやしない。このまま転げ落ちるくらいなら可能性に賭けてみてもいいんじゃないだろうか。
そうだ、失敗しても失うものは死にたいなと思っている命だけだ。もし捕まりそうになっても拷問が嫌ならその場で自害するはずだ。そして成功すれば最高の結果に向かって進む。どれに転んでも僕に損はない……なら賭けてみてもいいじゃないか。むしろ賭けるべきじゃないだろうか。
(……よし、また尻込み前に行動だ。鉄は熱いうちに打つ)
そうと決めてからの僕は何かが違っていた。具体的に何がとは言えないが、自覚症状があるほどに変わったなと感じていた。
僕はとりあえず魔族の姿に戻り高高度から情報を集めることに決め、止まることなく考えながら行動し続けた。不安材料や代替案などをあれこれ考えず、どうやったら成功するかに焦点を当て、これなら絶対に成功するという確信を強めるまで試行錯誤を繰り返した。
そうして仕上がったプランはーー
「これで絶対に成功するはずーーいや、これは絶対に成功する」
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