第54話「ダンジョンの機能を検証」

(……思ったよりも早かったな)


 村へは太陽が傾く前に到着。

 まずは村長に一言必要かとも思ったが、いまだ向けられる新参者への視線に辟易。ウロウロしたくないほどの空気が漂っているので、少し無作法かとも思ったが村長宅へ足を向ける。「ある程度話してくれても良かったのにな」と多少の不満を募らせつつも、程なくして当てられた小屋ーー離れに到着。


(陽が沈むまではここで待つか……)


 そう思い腰を落ち着かせても、手持ち無沙汰となり時間を長く感じはじめたーーそんな時、僕はダンジョンの機能の確認をしようかと思い立つ。やはり思考材料がなければ捗らないし、無駄なことに時間をつかってしまいかねない。

 僕は念には念を入れて監視の目がないか確認する。万が一でも見られたら説明が面倒だ、バレる可能性だって無くはない。


(よし、魔術的にもそういった類いものは見つからない)


 そしてさらに僕は、目視される可能性を潰すため窓を閉め、用意されていた明かりを点ける。


(我ながら疑り深いことだ……)


 そうして自分なりに安全を確保、僕はメニューを開こうと試してみた。


(……立ち上がらないな)


 ダンジョンからか、コアから離れすぎたからか。はたまた違う何かが原因か。

 色々と考えたが確信に至る答えは出ない、次は念話を試してみることにする。もし魔力的なことで突っ込まれたら練習だとごまかそう、この村には魔術を特定するような高度なものを習得している人間はいないはずだ。わずかな可能性も考えてみても荒唐無稽な理由ばかりだし、無視していいだろう。


(かけてる音は鳴るんだなーー繋がった?)

(おおマスター、どうしましたか?)


 スケルトンの声が聞こえる。

 どうやら離れていても繋がるらしい、距離の限界は分からないが一応成功だ。


(いや特になにも問題はないんだが、離れていても念話が繋がるのかの実験をな)

(なるほど、重要ですな)

(だろう。検証は済んだしもう切るぞ)


 僕は了承の旨を聞いてから早々に念話を切った。


(……魔力消費量が増えている)


 その量は思わず唸るほどだった。

 どれほどの倍率で変わっていくのかは未知数だが、この村からでも気軽には使えない。出先では緊急の時にしか使うことはないだろう。一応の結論と結果も出たし、何か他のことで暇を潰そうかーーノックの音がした。

 僕はとっさに身構える。荒さを感じさせる音だ、一体誰がーー


「オイ居るか?」


 村長の声だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る