第53話「村への道すがら」
(さて、適当に目ぼしいものが無いか調べつつ街道までは身体強化かな)
僕は上げた速度に負けないように動体視力にも多少の魔力を使い、周囲を探索しつつ村を目指した。もちろん無用な戦闘は避けるために隠密行動にも気を使い、魔力感知も展開している。だが今回は潤沢に魔力が使用できないので、範囲を犠牲にするカタチで消費量を制限。不意遭遇の可能性も木々を飛び乗ることで対処している。運が悪すぎなければ魔鳥レベルの対応だけで済むはずだ。ドラゴンはないと思うが猛禽類には注意が必要だ。奴らは音なく襲いかかって来る、なるべく動いて狙われにくい状態を維持、目視でも警戒を厳にしよう。
(……んー魔力が心もとないな)
別に魔力切れという訳ではない。戦闘もできるし、よほどの相手でなければ勝利もできるだろう。だが潤沢ではないのが今の状況だ。狩りは除外して採取に専念しよう。
僕は採る物がないか辺りを見渡すも、実をつける木々もなければ目ぼしい薬草もない。キノコも探しはしてはみたが、目につくのは高所からでは色鮮やかな毒々しいものばかり。造詣は深くないがあれは食用ではないだろう、蛍光するような青紫はとても食う気も起きない。
(これは解体する時に剥いだウサギ皮だけになりそうだ)
事前知識もなく、ついでで糧を得るなんて見通しが甘かったか……
土地勘がないと、このような場所に群生しているという当たりもつけられない。狩りならば魔力感知・動体探知である程度目処は立つが、現在無理をする必要はない。
(それに村で聞いた情報も、適応するのは森の外縁部のみだろう。今の場所だと捕食型・腐食型の肉食動物が居るかもしれない)
狼の時ように注意が逸れている・不意打ちができる状態じゃないと肉食動物の相手は色々と厳しい。ウサギでもあの調子なので、今の状態では捕食型・腐食型の中型〜大型肉食動物はかなりの難敵だ。変化して色々と制限されている状態でもし先制されたら……僕の命はあっけなく散るだろう。
(これは参謀だけじゃなく、僕自身と行動を共にしてくれる護衛も必要だな。単独行動は幅が狭まる)
僕は考えと計画を修正しつつ採取の優先順位を下げ、村に急ぐことにした。それに収納もない状態では得られる量も限られる。皮袋などを手にしてからの方が効率もいいし、日をまたけば魔力も回復するだろう。あまり時間を無駄にはできないが、無茶や無謀を美化して浸ってはいけない。
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