第52話「再び村へ」
僕はそれから先ほどの空間に戻ると、ゴーレムに監視された男達が見えてきた。その様子は表面上変わっておらず、ゴーレムの位置や姿勢から見るに変な行動は取らなかったらしい。まあ何かあれば念話が飛んできたはずだし、当然ではあるのだが……
(何か異常は?)
(特にはございません)
(わかった、ありがとな)
さっき触れた話題のせいだろうか、疑うという行為だけでも心が荒んでいくのが分かるーーいや正確に言えばそういった錯覚を覚える、だろうか。実際にどうかはわからない、この200年で相当に麻痺もしているだろうし。
「ほら、水だ」
「ありがとうございます」
甕が置かれると、スクイドは大げさにお礼を言った。
心のありように関わらず自尊心をくすぐる体勢だ。これは勘違いを助長する、是非とも止めてもらいたい。肝心なとこで自分を見失いそうだ。
「そんな大げさに接しないでくれ、対等までは難しいだろうが気軽に接してくれ」
「ありがとうございます」
感極まったように頭を下げるスクイド。
流石にここまで来ると鼻につきそうなものだが、彼にはそれを感じない。真意のほどは分からないが、誠心誠意さを受けてめている自分がいる。まあ信用・信頼までは行かないが試すのは確定しているし、見極めるのはそれからでも遅くはない。監視にゴーレムも付けるし、よっぽど不幸が重ならない限りは大丈夫のはずだ。
「……まあ、それじゃあ、準備を整えて来る。明日にも顔を出すからそれまで大人しくしといてくれ」
「了解しましたですはい」
僕はゴーレムと念話をしながら外へと出た。
内容は外での活動について、そしてそれに伴った問題についてだ。
(外で活動して何か問題はないか?)
(魔力の回復効率が下がる程度です)
(それはコアから離れるから起きることか?)
(そうです)
なるほど、では僕の回復量もコアによる恩恵で確定かな。
それからも回復量が下がることへの懸念なのも聞いていったが、特に問題はなさそうだ。もちろん過剰な攻撃を受ければ倒されてしまうし、無茶な魔力の使用もできないことを考えると心配でもある。でもコアから離れても思考などに影響は無いみたいだし、諜報や遠征など連携が必要な行動も容易だ。問題上がれば帰還の許しも出したし、こちらに不利益になることは避けるようにと念も押したし、緊急事態に陥ることも少ないだろう。
(では留守は任せた)
(承知しました)
もちろんスケルトンにも留守にする旨を伝え、探知を避けるために念話を切った。
さて、村に戻ったら飲みニケーションだ。かなり久々のアルコールであるし楽しみでもある。その理由は生き血で祝杯をあげる軍団に所属してたからで、まっとうな宴会など200年振りだからだ。
「ああ、飲まなきゃやってられない」
前世でこれほど飲み会が楽しみだったことがあったろうか。口に出してしまうあたり重症だ、僕は思わず上がる口角に心震わせながら森を駆け抜けていく。
この調子なら楽々間に合うだろう。皮製の袋も貰えることだし、ついでに何かを採取して行くのもいいかもしれない。
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