第51話「細さ」
(さてどうするか……)
(どうしましたか?)
(ああすまん、気にしないでくれ)
(承知しました)
念話に引っかかる基準がわからない。頭の中で完全に言語化したら念話に引っかかるのか?
僕は意識的に俯瞰するように頭を働かしてみる……どうやら念話にはカウントされないようだ。
「ゴーレム……」
どうやら独り言も範囲には入らないようだ。基準がいまいちわからない。
僕は気を取り直して、男二人の水問題に意識を傾ける。色々と考えてみたが、適当に魔術で器・甕を作って水で満たしたものを渡すのが楽でいいと結論。さっそく魔術で甕を作り、その中を水で満たした。
その時にふと思い、魔力消費を確認するが問題はなさそうだ。戦闘に耐えうるほどの強度・精密さを要求しないので当たり前かと納得、これなら岩で作っても良かったかと思うもダンジョンの特異性を考える。
うん、止めておいて正解だった。一定時間で元に戻るような素材で作ったらどうなるのか、それをダンジョン内で放置するとどうなるのか、しかもそれをダンジョンマスターが作ったらどうなるのか……色々と仮説が出てくる。面白そうだからいずれ実験してみるのもいいかもしれない、と思いながらも甕を手にとり男二人の元へ戻ることにしたーー
(キャッチ音?)
(どうしましたか?)
(スケルトンから念話が入ったらしい、一旦切るぞ)
(承知しました)
と言ってもフック操作を念話でどうやってやるのか。というか出来たとしてゴーレムとの念話は保留扱いになるのか?
僕は多少混乱しつつもスケルトンの念話に出るように意識を向けると、スケルトンの声が聞こえてきた。
(おお、繋がりましたな)
(どうした?)
どうやら操作は感覚でいいらしい、まったく便利なことだ。
(いや、あの者達がこの隠し部屋を見つけてしまった時の対処をお聞きしたかったので)
そうかなるほど、確かにそれは大事だ。
いくら僕でもコアの部屋を見られたら不味いのはわかる。少なくともダンジョンの外に出すわけにはいかない、となると……いやしかし。
この異世界で何をとも思うが、殺せと選択するほどの気概はない。かといって捕らえられても沙汰を言い渡す時に胃を痛めることになるだろう。
(……好きにしろ)
(……感謝いたします)
最低野郎だな、僕は。
アンデットに生者を好きにしろと言ったらどうなるのか。それは想像に難くない、良いことにならないのは確実。でもきっと僕は殺せとは言ってない、と予防線を張っているんだろうーーってここを出る時には侵入者は排除しろと言っておいて、いざ対象が目の前に現れたら、現実味を帯びたらこれか。神経細すぎないか……僕は。
(……ではお時間を取らせるわけにもいきませんので、これにて失礼します)
(ああ)
スケルトンとの念話が切れたのを感じ、再度ゴーレムとの念話が繋がったのを認識した。
さて、切り替えて話をしないと怪しまれるかもしれない。僕は心を整えるように長く息を吐き、気力を取り込むように息を吸い、ストレスを外に出すように吐ききって頬を叩く。
(今から戻る)
(承知しました)
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