第50話「違和感」
頭の切れる奴を召喚・生成するとなったら良い触媒、素材が必要だ。だがもしそれらがあっても、男二人が居るこの状況ではメニューを開くのも避けたいところ。隠し部屋なら可能だが、肝心の材料が乏しいので結局は物資をどうにかしなければならない。
これは早いところ行商人として派遣できるように準備を始めなくてはいけない。
「じゃあ行商人として協力してもらう」
「はい喜んで」
「……では手配が済むまではこの洞窟に居てもらおう」
「それはもちろん」
こうまで着々と進んでいくと違和感を感じてしまう。
落差なんだろうか、警戒心を覚えるほどに話が通りやすい。だが了承されているのに計画を進めないのもおかしいし、変に疑えば心証を悪くする。
少し対策しておく必要があるかもしれない。
(監視を頼む)
(承知しました。もし変な行動をした場合はどうしましょう)
(拘束しろ)
(承知しました)
殺せとは命令できない。
でもいつかそう命令する時が来るかもしれないし、自らの手で殺める時が来るかもしれない。しかし少なくとも今は避けた方がいいだろう。もし心の平静を欠いてしまったら破滅的・短絡的な行動に出るかもしれない。もしそうなったらお終いだ。見つかったダンジョンマスターを放置してくれるほど人族は甘くはない。
「どうしましたか?」
「いや、少し考えてただけだ」
「あーなるほど」
何がなるほどなんだ。
「……とりあえず明日にまた顔を出しにくる」
僕はそう言いながら解体済みのウサギ、食えるであろう果物などを置いていく。量はそれほどないが大丈夫だろう。人間食わなくても数日は問題ない。
「あのーすみません、水はどうしたら……」
そうだった。生命活動に一番必要な水分のことを忘れていた。
僕は冷静を欠いている自分を戒めながら「少し待て」と言い残し、ダンジョンの外へと向かう。
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