第48話「ボロボロ」

「そもそも俺は反対だったんだ、それを調子のいい奴らに唆されやがってクソダコがあ!!」

「あ? お前だって世の中変えてやるなんて言ってノリノリだったじゃねえじゃクソイカあ!!」


 話が飛んでは飛んで罵倒しあっている。

 曰く圧政によって村が困窮し、彼らは良い境遇ではなかった。親か彼らが原因かは分からないが、爪弾きもの扱いだったこと。さっさと見切りをつけて街に出稼ぎに行ったこと、そしてすぐさまの失敗と挫折。さらに再起を狙うも資金も機会も得られず、八方塞がりになる。そんな時スラムで知り合った奴らに誘われ一発逆転を夢見たこと。子爵家の令嬢を襲うにあたって協力者、情報提供者がいたこと。


(ずいぶんと分かりやすく落ちぶれているな、彼らは)

(典型的なダメ人間。目先のことしか考えていないのでは?)

(そうとも限らんぞ、あれだけ疑ぐり深かったんだ)

(確かにそうですね)


 そう、彼らは物事を考える頭を持っていた。危険を回避するために色々と思考し、目先だけに捉われず仲間を守るための心も持っている。ならなぜーーいや、そこまで追い込まれるほどの状況になってしまった……そうゆうことなんだろうか。


「だいだいこの交渉も失敗できないとかいって妙な計画しやがってタコ野郎!! あそこまでやるなんて聞いてねえぞ!!」

「うるせえイカ野郎!! 話せる訳ねえだろうが!!」


 ついに喧嘩内容が僕との交渉の件になった。

 曰く僕を信用できないのでそれを確かめようとした。その役目を買ったのがオネフットで、万が一の場合は犠牲になるのは足手まといの自分だと。でも相棒が納得せず、死ぬのは嫌だから万が一の時は助けてくれと説得した。どうやら怪しい雲行きになったら二人で謝罪し、足を無くして普通の精神状態ではなかったと説明するつもりだったらしい。さらにその際に納得させられない雰囲気になってしまったら、僕が止めに入るほどオネフットをボコボコにする予定だったと……そしてそれでもダメならオネフットは自分の命を対価に相棒を助けるつもりだったようだ。


(まさか僕の知らないとこでこんな……)

(マスター)

(……なんだよ)

(扱い方次第では彼らは使えるのでは?)

(まあ、だろうな)


 色々と懸念はある。だがそこだけを考えても仕方ない。

 裏切る可能性は誰にでもあるし、考え方も捉え方もそれぞれ。人族にとっては僕を裏切ることこそ正義だろう。彼らには正体を明かさず悟られず、利益に関してのみは信用たりえる関係を築いていくのがいいのかもしれない。


「そろそろ喧嘩はやめて話を進めないか?」


 そう僕が声をかけると彼らは思い出したかのように固まり、こちらの存在を再確認した。

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