第45話「ゴーレムとの対面」

 それからすぐに辿り着くも警戒する猫のような目がお出迎え。それも含め違和感をバリバリ感じるが、こんなゴーレムが迫ってくるなら挙動がおかしくなっても仕方ない。しかも逃げ場もない袋小路、冷静に相手の立場になると同情してしまう状況だ。結果的に荒療治、賭けみたいになってきたな。

 僕はすぐさまゴーレムの方を向き、口頭で待機しているようにと命令を出す。念話が繋がっているので声を出す必要はないのだが、これはポーズだ。目的は怖がらせないこと。そのために道を塞がないようにゴーレムを立たせることも忘れない。少しでも不利になりかねない要素は排除する、思いつく限りは。


(怖がらせないように動いたりするなよ)

(承知しました)


 さて、話の流れでこのような状況になってしまったが大丈夫だろうか。振り払っても振り払っても「これでよかったのか?」という自分が湧いてくる。頼みもしないのにご苦労なことだ。

 不安を覚えながらも僕は意識を整え、適当な場所に腰掛ける。


「……それがゴーレムか?」


 男の声が震えている。

 そこまで怯えることかーーってそうだろうな。僕の一言でゴーレムをけしかけることが出来る位置関係だ。戦闘能力もないものには重圧を感じるほどの空気だろうな。そう見ると彼は気丈にも耐えている、そう言っていいほどだ。


「そうだ」


 そう答えるも男の視線はゴーレムに固定されていて反応がない。聞こえてはいるんだろうが、届いているのだろうか。そう思わせるほどの目力と表情だ。変に話しかけない方がいいだろうか、少し待ってみることにしよう。

 それから徐々にだが、男の表情は落ち着きを取り戻していった。呼吸も浅いものから長く深いものに変わっていく。そうして目を閉じ、一回深呼吸をすると僕の方に体を向けた。


「……逆らっても無駄だと言いたいのか?」

「そうじゃない、命令するとこを見せるだけだ」

「それで?」

「危険がないと証明する」


 なるべく穏やかにそう言っても、怯えの影を見て取ることができる。平静を装っていると分かってしまうだけに、想像以上のものが透けてしまう。

 僕はゴーレムは危険な存在ではないと証明するために、色々と命令を出してみた。まずは安心させるために「彼らに危害を加えないこと」そして「右手を上げて」など簡単な指示を出し、それを言葉通り実行する様を見せる。


「どうだ、これで多少は信じて貰えるか?」


 それに対する返答はない。

 ただその表情は見極めるように鋭く、ゴーレムと僕の両方を注視していた。何を考えているのかはわからない。だが信頼してくれていないのはわかる。

 さてどうしたものか。

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