第43話「ネガティブという相手」

「……護衛?」


 逸ってしまったか。

 途端に疑わしいといった表情になったなーーいやまあ誰でもそう思うだろう、うん。現段階の関係性では仕方ないはずだが……

 面倒なことになった。このままでは”しこり”を残すことになるかもしれない。人は感情の生き物だ。どんな些細な不満でも積み重なれば、容易に変貌してしまう。


「(だが賽は投げられた。せめて納得くらいは……)そう、護衛だ。まあ気づいているとは思うが監視の意味合いもある」

「……俺たちが信用できないってか?」

「信じたいとは思っている」

「なら信じて貰いたいものだがな」


 なぜそんな言い方ができる。

 殺されることはないと分かったからか? にしたって状況的にはこちらが有利、唯々諾々とはいかないまでも準じた態度になるのが普通のはずだ。森の中での交渉では「殺さないでくれ」という具合だったのに何故……?


「(出ない答えを導こうとするのは止めだ)手放しでお金を渡すのは難しい。信じる信じないに関わらず、進捗が分からなければこちらの行動にも支障が出てしまう」


 ここは線を引かせてもらう。

 いくら交渉を成功させたいといっても、全てを譲る訳にはいかない。決定権を過剰に与えてしまえば関係が傾いてしまう。それで成立したとしても長続きできる環境じゃない、再度ゼロから探す羽目になるのは避けたい。


「……まあ、それは分かる」


 そんなにあっさりと引くなら何故言った……まあとりあえず納得は引き出せたから良しとしよう。


「心配な気持ちも分かるが人をつけるわけじゃないから安心してくれ」

「悪魔でもつけようってか?」


 ジョークなんだろうが、心臓に悪いことを言ってくれるな……


「いや、ゴーレムだ」

「ゴーレム?」

「そうだ。命令に忠実で疲れを知らない岩人形。あらかじめ命じておけば優秀な護衛になる」

「……裏切ったら殺せとでも命令するのか?」


 なぜそこまでネガティブに受け止める。どうにかその思考を打破ーーまではいかなくとも変えておきたい。

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