第40話「引き伸ばして考えて」

「まず頼みたいことに僕が関わっていると世間に知られたくない。それが理由の一つです」

「まあ、だろうな」


 そしてかつ自然ながらも信頼される背景……なんだろうか。彼らにとってーー野盗に身を落とすことになった男たちが手を組んでもいいと思う情報、付き合いを続けていきたいと思われる要素……

 やはり条件が一致していることは言おう。信頼関係の構築は一瞬ではできない、ある程度の期間が必要だ。それが築けるまではこのダンジョンに軟禁させてもらおう……ったく、異世界に染まっている部分は染まってきてる。罪悪感が湧かなくなれば最低で最高なんだが、それは色々と終わる気がするな。


「そしてもう一つ。なるべく足のつかない人材が欲しい」

「後ろ暗いことか……」

「そうだ。でも見方を変えるとそうでもない」


 男の表情が先を促すように変わる。

 だが僕の頭の中はノープランだ、口からでまかせを言った。でも悪くないかもしれない、彼らは近しいであろう互いをかばい合うほどには善人だ。上手く噛み合えば同じ目標持つ存在になれる、かもしれない。

 でもそれを探し出すには相手の情報が必要だ。流れを変えるにもいいかもしれない。


「でもまだその理由は明かせない」

「俺たちには話せないってことか?」

「そうでもない……」


 彼の表情がガラリと変わる。

 そんな顔しないで欲しい、こっちもいっぱいいっぱいだ。少し考える時間、整理する間が欲しい。ちょっと攻めさせてもらおう。


「……話してもいいんだが、君達の素性次第だ」

「俺たちの?」

「そうだ、何も知らない赤の他人に深い事情まで話せるわけないだろう?」


 男が眉間に縦じわを作り黙り込んだ。

 少し上から目線だったかもしれない。こうゆうのは印象を悪くするし気をつけないと。感情的になられでもしたら話し合いどころじゃなくなる。


「……何が聞きたい」


 おし、話はきちんと流れていっている……はず。今はそう信じて情報の収集だ。


「まず君達がなんで貴族の子女を襲っていたのか知りたい」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る