第27話「爆裂、放たれる魔術」
その時、また状況が動く。
なにがキッカケだったのかはわからないが、群れーー狼達が機能的に狩りを開始した。背後のチームがわざと姿を見せて獲物を逃走させ、左右のチームが逃走経路を限定し、疲れさすように泳がせたところに待ちぶせたチームが退路を塞ぐ。
囲まれた男2人が逃げ道を探そうとするが、すでに囲まれており隙間はない。移動に難のある状態で、そこから逃げ出すのは不可能に近いだろう。個としての能力が高ければ別だが、そういった片鱗はなくこのままではただ狩られるだけ。
そんな獲物に対し狼達は、入念に包囲の輪を小さくしていく。獲物の背後にいる個体が音を立てたり、視界の端にいる個体が襲うそぶりを見せたりと、相手の体力と精神を削りつつ徐々に追い詰めていく。
そんな工程は流れるように行われた。その時間はとても短く、気づいてすぐに身体強化を発動したにも関わらず、その場に割り込めたのはまさに噛みつかれる寸前であったーー
(間に合えっ!!)
僕は飛び蹴りで噛みつきを阻止して着地、すぐさまオークの死体を投げ捨てながら構築していた術を放つ。ライトの魔術と、音の増幅するものを応用して作った”フラッシュバン”を。
「目を閉じて耳を塞げ!!」
応答を待つ暇はなく爆裂する閃光。それは閉じた視界をも白く焼きつけ、覆った耳にすら軽い機能障害を起こさせるほど。
(くそ、これは魔力を込めすぎたな)
緊急かつ喫緊であったとはいえ力を込めすぎた、消費した魔力が存外に多い。影響のことを考えると、この場をすぐに離れたほうがいいかもしれない……周囲の状況を調べたいが、残存魔力はなるべく減らしたくない。
僕は目視と普段の感覚を頼りに周囲の状況を判断するが、感覚が狂っているので細かいことに気づけなさそうだ。目がちかちかするし、耳鳴りも酷い。分かったのは僕以外の存在が深刻な被害を受けている点だけだ。見当違いな方向に喚き散らしている狼、すがるように鳴き声を上げて震える個体、気絶して倒れている者。
(……すぐに離れよう)
僕は気絶している男2人を抱え、その場を後にした。
(安全なダンジョンに運ぶか、安全な街道に運ぶか。どうしようかなあ……)
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