第23話「解放してみた」

「うわぁあああ!!」

「死にたくねえよぉおおお!!」

「ーーーーッ〜〜!!」


 野盗たちは逃げ出した。

 わかってたさ。相手の立場になればこのまま殺されるとか、衛兵とかに突き出されて犯罪者にされるとか、その末は処刑か強制労働者とか怖いだろうよ。でも話も聞かずに逃げるのはどうかと思うんだが……まあ、俺も何も言わずに解放したし、無言で魔物解体してたのも不味かったんだろう。


(冷静に考えると無言でバラした後にフラリとこちら向いて、何も言わずに解放するって怖すぎるな)


 しかし、逃げ出さない者たちもいた。片足を切り飛ばされた男と、それをかばうように守ってる男だ。逃げ出した3人とは違う間柄なのだろうか……顔立ちは似ていないので兄弟ではないかもしれない、あって親類縁者だろう。

 そんな時、守っている男が口を開いた。


「頼む、殺さないでくれ」


 こいつは僕を快楽殺人者とでも思っているか? そんなに鬼気迫るほど願わなくてもいいだろうにーーいやいや今は説得と信頼関係の構築が優先だ、そっちに頭を回せ。


「そう思うのも無理はないだろうが僕に殺意はない」

「「……」」


 僕の答えに二人は真意を探るようにこちらを見てくる。その表情は分かりやすく、疑わしい・信じられないといった怯えを含んだものだった。きっと妙な想像をしているに違いない。

 んー、情報が何もないから色々と交渉しにくいな。下手に突っ込んで決裂したら人材探しからだし……追跡されにくくて紐付きでない人材を町や集落で探すのもなあ。もし魔族とバレたら手配される恐れも高いし、やはりここは社会的にあぶれたであろう男2人を仲間に引き入れたい。無理やりで脅すのはなるべく避けたい、あれは精神衛生上大変よくない。


(んー、まずは相手に会話の主導権を渡して聴き手に集中したいな。少しでもいいから情報、とっかかりが欲しい)


 僕は笑顔を心がけながらその場に座り、すぐに攻撃や回避に移れない姿勢になる。これで多少でもいいから警戒心を緩めてくれば儲け物なんだが……


(まあ無理だろうな。こんなことで警戒心が薄れるなら、交渉人なんて職業は前世にはなかっただろう)


 手詰まり感の漂うなか、僕は果物をあげることを思い出す。


「腹空いてないか? 何か食べるか?」

「「……」」


 そんな「何を考えているんだこいつ」って息を浅くして見ないでもいいじゃないか……もしかして毒を盛るとでも思っているんだろうか。そんな訳ないのにーーってこれはこっちの論理か。

 僕は採取していた果物を取り出し、一口噛んで食べてみせ、それを二人の方へ投げた。「食べかけを渡すなんて」とも思ったが、毒がないのを証明するには仕方ない。彼らが解析や分析系魔術を使えなかったら原始的な方法しかない。


(これはもっと飢餓状態になった時に来たほうがよかったかもしれない……手もつけやしねえ)


 これは難航しそうな気がする。何か思い出せ、こうゆう時に仲良くする方法とかーーあっ

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