第22話「交渉前に解体せねば」
わかっていたことだが、彼らは僕を視認した瞬間に騒ぎ出した。口は根っこやツルに抑えられているため、要領の得ない感じだが……
とりあえず彼らを解放する前にゴブリンとオークをどうにかしないと。今のとこはゴブリンの悪臭が血の匂いをわからなくしているようだが、視認されればハイエナ共がやってくるだろう。数が集まってきたら厄介だ。特に狼とか群で狩りをするタイプや、徒党を組んだゴブリンやオーク共。大挙されたら陣で生成した魔法植物も保たないだろう、魔素の収支がマイナスに傾いて瓦解するだろうなあ……ってその前に陣を消されるか。
(幻術とか結界がうまく使えたら楽だったんだが仕方ない。手早く済ませよう)
まずは廃棄用の穴を掘り、オークの内臓を取り出して捨てて、中を水の魔術で洗浄する。もちろん胸部にあった魔石は洗浄して懐に。
さて、血抜きをしたいが心臓は完全に止まっている。内臓の切除とともに切れた太い血管からも、たいして血は出てこない。
(ダメだこれ手遅れくさいぞ)
おそらく筋肉の中に血が溜まったままだ。腹の切開や内臓切除も遅れたと考えると、このオーク肉はかなり臭みがあるだろう。倒され方からしても傷口から細菌が侵入し、血管内で増殖して血を汚している可能性も……これは口にするとしたら念入りに焼くかしないとーーいや最早食わない方がいいかもしれん、これは森に還ってもらおう。
(深く考えるのはよそう、最悪置いていくことにしようーーいやダンジョンに持って行きたいな。きっと素材になるに違いない)
続いてはゴブリン。こいつは魔石を取り出したら廃棄穴へ、以上。こいつらの肉は食えたものではないし、たとえ食えたとしても痩せているので可食部は少ない。そしてなにより不衛生であり、血肉に至るまでとっても臭いのだ。ダンジョンに持っていくのを躊躇うほどに。
(よし、とりあえずこれで大丈夫かな)
あとは彼らとの交渉なのだが……彼らの様子が友好的ではない。怒りの形相をしている者、不安に震えている者、モガモガとわめき散らしている者と様々だ。交渉失敗を容易に想像させてくれる。
んー、なにか突破口はないか……全員ひどく痩せているし、食事もろくに取れていないだろうから飯で釣れないだろうか。
(肉を焼く匂いの中で交渉したら上手くいくかな……?)
いやダメだろう、魔物と野生動物闊歩する森の中で肉を焼くなんて……釣られて色々とやってくるに違いない。でも待てよ、匂いを空だけに流れるようにしたら危険は減るかなーーダメだな、猛禽類か空飛ぶ魔物共が……
(んー、ここでは果物食わしつつ金貨をチラつかせて交渉した方がいいかなー)
それで成立した奴らには街道か安全地帯見つけてから肉を振る舞って〜報酬交渉の流れがいいかもしれない。
そうして僕は穴だらけの計画を頭に、彼らを一旦解放する。案の定ーー
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