第21話「とりあえず目的地には着いた」

 僕は戦闘を避けつつ野盗達との相対位置を調べる。


(火龍連峰は大きすぎて当てにしにくいから、街道沿いを進みつつダンジョンを目指す感じかな……ある程度まで近づかないと探知もできないし)


 森から浅めのとこなら魔物に襲われる危険はグンと下がる。彼らも出れば命の危険が多いこと、屠られる危険がなくとも煩わしいこと、魔素が少なく過ごしにくいことを学んでいるのだろう。そこら辺の簡易的な住み分けができているが、それも絶対ではない。知性あるものは気まぐれにやってきたりするし、知性なきものは欲望に身を任せ現れたりする。

 前世の時もあった住処を追われて・食料を求めて人里に仕方なくなら納得できるが、この異世界では命を狩るのを娯楽としている個体もいるので事情が変わる。全く迷惑な話だが我々魔族にも一定数いるし、ただ生きるのに飽きていく長命種がその思想に染まる可能性も無視できない。


(それでも多くの種族は滅びずにいるってのはすごい話だよなあ……)


 そんな考え事をしながら森を突っ切っていると、いつのまにか目的地付近に辿り着いていた。索敵と警戒のために放った魔力探知からも、5つの反応と魔法が使われている気配を感じる。

 僕は誤認ではないかを確かめるために、高所から見下ろせるポイントへ移動をした。


(うんうん、陣もきちんと機能してるみたいだ)


 多少懸念していた強力な個体も現れていないようで、周囲には最下級と思われるゴブリンとオークの死体が転がっていた。


(いいね、労せずに魔石を手に入れられる。それとオーク肉もだが……まあ俺が食うわけじゃないし、多少の獣臭さは彼らの判断だな)


 ここで僕は少し考えた。

 さて、どう説得しつつ仲良くなるか。変化はこれしかできないから、見た目を変えるなら幻術しかない……でもあれ上手く使えないんだよなあ。なら魔族の姿でーーそれは却下だな、危険が過ぎる。やはりこの前世の姿でどう距離を縮めるかだな。


(腹いっぱい食べさせれば大丈夫かなーーってそう単純な話じゃないし……んー、最初は利害関係ベースで追い追い信頼を構築していくかだな)


 よし、まずは僕と仲良くなればメリットがあることを提示してみよう。それでダメなら操るしかーーいやいや止めておこう、結構あれ精神に来るんだよなあ。細い神経が恨めしい……

 最終的に「相手がどう出るか分からないし考えるだけ無駄、その場で修正しつつ乗り切ろう」と決めた。果たしてこの選択は腹を括ったのか考えを放棄したのか。


(もうなるようになりやがれ!!)


 僕は正解の不確かな人間関係構築のため、彼らのいる場所へ飛び降りた。

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