第18話「村長の厚意、そしてこれからの計画」

 僕はそれから村長と他愛ない雑談をし、お金のやり取りをして銅貨を多少得た。

 これだけあれば色々と買えるはず、多分。もし足りなかったら行商人から何か買って両替しよう。


「少ないだろうが銅貨を全部吐き出すわけにもいかねえ、すまんな」

「いえいえ大丈夫ですよ、色々と情報も頂けましたし」

「いやまだ足りねえだろ」

「価値観の相違ですよ」

「……こっちから持ちかけといてなんだが納得いかねえな、足りない分は色々協力してやるよ」


 どうやら村長は想像以上にいい人みたいで、追加で色々と配慮してくれた。寝泊まり用に部屋を提供してくれたり、朝夜2回食事を出してくれるらしい。しかも無償で。さらには村人への顔つなぎに、ささやかながら歓迎の宴をしてくれるとのこと。至れり尽くせりだ。

 しかし村長ってツンデレ的な素養があるのだろうか……深く考えるのはよそう、控えめに言って頭が割れる。


「ありがとうございます」

「いいってことよ。宴は夜、ここの大広間でやる。お前酒は飲めるか?」

「まあ多少は」

「言ったな? 日没が楽しみだぜ、逃げんなよ」

「……お手やわらかにお願いします」


 そんな顔で「逃げんなよ」って言わないでいただきたい、正直ちびるかと思った。


「なーに軽ーく飲むだけだ。軽ーくな」


 そんな言い方されたら乾いた笑いしか返せない。やっぱりアンタおかしいよ、飲みの誘いで相手に鳥肌立たせるとか……


「ええ軽く飲みましょう、ね? 軽くですよ?」

「わかってるって」


 わかってないってその顔は。これは何を言っても変わらんだろうな、話題を変えてとっとと外に出よう。日が傾く前に。


「村長」

「なんだ?」

「夜までには帰りますんでちょっと外出てきていいですか?」

「構わんがその前に部屋の場所を教える、こっち来い」


 それから案内されたのは離れのようで、正直助かったと安心した。同じ屋根の下は気が休まらないし、何をキッカケに魔族とバレるかわからないからだ。


「じゃあわしは仕事に戻るから、迷惑にならない範囲で好きにやってくれ」

「ありがとうございます」

「あ、そうそう。あまり汚さんでくれよ?」

「それはもちろん」


 村長は僕の答えに満足したように頷くと、どこかへと去っていった。


(さて、森にでも行くか)


 僕は頭のなかで計画を立てながら走り出す、もちろん人の範囲内で。

 さて、必要なのは欠損を治すほどの薬草ーーは見つけられんか。治癒系の魔術を使えたらいいんだが専門外だし、魔族に効く魔術を人に使ってもいいのかも分からない。なら松葉杖っぽいものを作っていくかーーってそういえばキメラの研究論文を応用できないかーーってマッドすぎるなそれは。


(しかもそれで失敗したら、魔族はここにいますよって宣言するようなもんじゃんか)


 ここは無難に薬草と松葉杖だな。あとは腹減ってるだろうから適当に狩りしていくか……塩はないが焼いた肉と果物があればご馳走だろう。できれば仲良くなって仲間ーーまでいかなくても協力関係を築きたいな。

 もしそうなったら不安少なく仕入れができる。


(……念には念を入れて尾行者はーー居ないな、よし)


 魔力反応なし、動いているものも確認できない。あとは動きながら乱数的に魔力探知、動体検知して反応がなければ大丈夫だ。

 それから小分けにして確認したが、村からの追跡者はなしと断定。これで追跡者がいたらゲームオーバーと割り切れるほど高位能力者だ。無視していいレベルだろう。


(よし、こっからはスピードアップだ)


 さて、さっき反応があった森の中の獲物でも狩りにいきますか。

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