第15話「まずは会話から」

「なんだ、恐がっとるのか?」

「あ、えーといやー」

「……くそっ、初対面の奴にはやっぱり恐がられるか」


 とても恐い。現在眉を八の字にして、眉間をシワ寄せ、少しうつむき、悲痛な声を出しているが……なにか気に障ることをしましたか? と手もみしながら下手に出たいくらいだ。いますぐに。


「(悪い人ではなさそうな気がする頑張れ僕)あのー、村長さん?」

「なんだ?」

「(睨まないでくれよ)僕は旅の者なのですが、少々村のものを購入させてもらえませんか?」

「……例えばなんだ?」

「まずは水と食料ですね、あと何か面白いものがあれば見せてもらいたいんですが……」

「……こんな村に旅の方が面白いと思うものはないと思うが」


 なんかさらに恐さが増したような気がする。そんな射殺すようなーーまあ村を守るために見定めてるだけなんだろうけど、心臓と頭皮に悪いほどの重圧だ。


「でしたら、水と食料だけでも」

「なら問題ない、量はお前一人分か?」

「はい、次の街まで持たせたいので多少頂くかもしれませんが」

「金が貰えれば多少は問題ない、むしろ金が貰える分助かる」

「なら良かったです」

「じゃあ付いてこい」

「へ?」

「余剰分の食料管理は一括でわしがしているんでな」

「なるほど……」


 歩き出した彼に僕は付いていく。ここで意外に感じたのが、村長は意外とおしゃべりだということだ。寡黙とまでは思ってなかったが、こんなに積極的に話しかけてくれるとは。旅は楽しいかという他愛ない会話、このまま街道上を行けば徒歩2日で街に着くという情報をくれたり、親御さんは心配してないかなど。この人は見た目で損しているのかもしれないな……ならなるべく普通に接すればある程度好印象かもな。

 それから村人たちの視線のなかを歩くこと10分程度、村長家に到着。平屋だがかなり大きい家だった。きっと集会所やら避難所、宿や食料庫を兼ねているのだろう。まあ家族数にもよっては見合った大きさなんだろうが、そう的は外してはいまい。


「ここがわしの家だ。どうだ立派なもんだろう」

「確かに他の家と比べると大きいですね」

「はっはっは、そうだろうそうだろう。いきなり貴族様が来ても大丈夫なように、立派に広く作ったのよ」

「貴族様は横暴ですからねー」

「まあそんな方ばかりじゃないのは知ってるがな、失礼がないのに越したことはない」

「確かに」

「……あーすまんな関係ないをしてしまって。年寄りの話に付き合ってくれた詫びだ、茶でも出そう」

「そんなお気になさらないでもーー」

「まあまあ気にすんな。規模は小さくとも商談だからな、もてなして有利に進めさせてもらおう」


 そう言うと村長は豪気に笑いながら僕の肩に抱き、家に招待というか強制連行される。見た目以上の力に驚いたがそれどころじゃない、これは最早ヘッドロックだ。

 く、苦しい。筋肉が硬くて柔らかくて男臭い。誰か助けてくれー。

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