第14話「村長に会おう!!」

 まず村に入ったら、やらなきゃいけないことがある。それは村長ーー権力者への挨拶だ。やはり何かを始めるときは最初にトップを抑えたり、気に入られたりすると非常に都合がいい。前世みたいに良いとこで横槍、盤上をひっくり返されたくはない。結果や効果ではなく、ただ気に入らないという点だけで排除されるのは堪えるのだ。

 聞いていないと怒るだけならまだしも、彼らのような権力者は言葉に影響力が乗ってしまう。だからまずはお伺いを立て、できれば言質をもらいたい。


(さて手っ取り早く誰かに聞こう……ん?)


 どうやら僕は余所者の洗礼を受けているらしい。無遠慮な視線、品定めされているような雰囲気、こっちを見ながらの囁き合う人々の声。これが排他的ってやつか。


(これは胃にくるな……でも聞かないと進まないしなあーーいや聞かないで自分で探せば……それは不審者扱いされるな、この視線の中を歩くのはちょっと……)


 分かっちゃいるが出来ない、いまの僕はそんな感じだ。どうやら心をくじきにくるこの空気は、予想以上に僕の一歩目を妨害しているらしい。


「(声を出せば引けなくなる、なるようになれ!!)あ、あのー……」


 思った以上に声が出ていない。か細くて息が足りてなくて裏返り気味。顔が熱くなっていくのを感じる。これは恥ずかしい畜生、なんだってんだ俺が何したこんにゃろめ。


「村長、さんに、挨拶したいのですが、どちらに、いらっ、しゃいますか?」


 こんなのいつもの僕じゃない。本当にどうしたんだ、呼吸って発声ってそんなに難易度高かったか? いつもやってることなのに、何でこうゆう時に限って機能障害すんだ? おかしいだろ今こそだろ、よどみなく喋るのはよ!!

 そんな現実でも脳内でも頭を抱えているなか、一人の男性がこちらにやってきた。


「わしが村長だが、何の用だ?」

「……(本当に村長、なのか?)」


 パッと見た印象は傷だらけの巌。絶対に堅気じゃないと思わせるほどの眼光、贅肉を探すのが難しいほどの体躯、加えて背も高いので威圧感がすさまじい。

 これは難しい交渉になりそうだ。

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