第12話「まずは街道に出よう」

「では街に帰ります」

「え、あーはい。お気をつけて」

「……供を許します」

「ふえ?」


 いきなりの付いてこい宣言をした彼女は、我慢するようにプルプルと口を結んだ。時折捨てられそうになった子犬のようになるので、本当に色々と限界なのだろう。


「それは護衛せよ、ということでしょうか?」

「報酬は弾みます」

「……」


 うーん、受けたくないな。リスクが大きい気がする。でも見捨てたとして彼女が生き残ったら、手配されてこれからの活動に支障をきたすかもしれない。変化も詳細にイメージできるものや、なれると確信が持てるものにしかなれない。引き出しは前世の僕だけだ。

 でも貴族からの報酬ならまとまった金額をいただける。お金はあれば困らないし、きっと役にたつ。物資以外の買い付けにも転用できるし、武器や防具の購入費、商売に使ってもいいかもしれないーーんー、だがしかし報酬を受け取る際に貴族と対面することになったら、バレるな速攻。きっと結界やら解析系の魔法で露見するに違いない。魔族とバレないようにする方法を探さんとな……最悪は代理人を立てるかバックレ、報酬はいらないと善人ぶって逃げよう。


「護衛の任、喜んでやらせていただきます」

「助かります」


 しかし無防備すぎないか、初対面の奴に同行を許すとは。危機意識が欠如しているとしか思えない。もし何かしらの根拠あってのことなら……特殊な能力を有している可能性がーーないな、あんな連中に追い立てられてたし。単に切羽詰まっているだけかな、おそらく。


「ではまず森を抜けて街道に出ましょう、そんなに距離はないはずです」

「……ええ」

「僕が先導しますので後ろを付いてきてください」

「……わかりました」


 それから程なく僕たちは森を抜け、街道へ出ることに成功。1時間もかからない道のりだったが精神がひどく摩耗した。

 警戒しているであろう強い視線を受け続けるのが、こんなにも心にくるとは。しかも僕を注視しているので、周囲への警戒は皆無。結果根っこに引っかかって転んだり、転倒先に虫がいて大絶叫したり、それで魔物を呼び寄せたりと……かばいながら戦うのは大変だった。敵の強さは問題なかったのにこの疲労感、芯にくるものがある。


「アリア様、ここまで護衛も馬車もなしで来られたのでしょうか?」

「私をなんだと思っているのですか?」

「これは失礼を。しかし街道上どこにも姿が見えないので」

「遠い別の場所に出てしまったのでしょうか……」

「もしかしたら近場にいるかもしれませんね、魔力探知を使って探してみます」


 今回は特に緊急性もないので詠唱の方式をとる。発動まで時間がかかるし、何をするのか丸分かりになるが、時と場合によって最高の手段だ。魔力も節約できるし、陣と違って細かな指定はできないが面倒じゃない。そしてなにより詠唱しないで構成するよりも、効果と精度が上がる。


「(森の中の反応は無視するとして、街道上の反応はーー高速で何かが向かってきてる)……一旦森に隠れましょう」

「どうゆうことですか?」

「高速でこちらに向かってくる反応があります。アリア様の味方か、それとも敵か……」

「念には念を、ということですね?」

「その通りです」


 はてさて向かってくるのは何者か。僕たちは森に潜み、反応が迫っていくる方向を警戒した。

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