第7話「変化と慣熟、そして確認」

 僕は詭弁を全うしたーーいや、途中からはマジになっていた。なんか少し気恥ずかしくて、なんか落ち着かない。僕はまぎらわすように思考をまとめ、スケルトンと細かな確認事項を済ませ、出発準備を手早く整えた。

 といっても身一つなので、大した準備はないが……


「マスター、言うまでもないと思いますが魔族と見破られぬようーー」

「わかってる変化を使う……」


 あー、なんか気まずいーーってこっちだけか。調子狂うな、少し顔も暑い。というか別に気にしなくてもいいのに気になる。なんで心の深部を知られるっていうのは、こうも頭の安定を崩していくんだ……まあ、気分自体は悪くはないーーと、思う、ってことにしておこうそうしよう。

 そんな僕の悶々とした雰囲気を勘違いしたのか、スケルトンは拳をつくって胸骨を叩いく。


「なあに、心配ご無用です。私に万事お任せください」

「……ああ」

「ではお気をつけて」

「ああ……行ってくる」


 僕は妙に言語化しにくい気持ちを抱えながら森へと足を進め、短く息を吐いた。

 よし、気持ちを切り替えようーー


「マスター!! お早いお帰りをお待ちしておりますぞー!!」


 ああくすぐったい。振り返り申し訳ない程度に手を振ったが、表情は変じゃなかったろうか。絶対に中途半端な気がする。いやきっとそうだった。ああこのムズムズと尾を引く感じ、なんとも言えん……

 それから僕はむず痒さを感じながら歩みを進めることになる。


「……ああ、ようやく落ち着いてきたな」


 呟いた僕は、いつの間にかクリアになっている脳に安堵した。足を動かして運動したのが良かったのかもしれない。よし、強力な魔物もいないみたいだし変化を済ませるか。いざって時を考えると戦闘力を落とすのは不安だが、これも物資獲得のためだ仕方あるまい。


「確かこの辺りの国は黒髪で目の色は茶色だったな」


 僕は意識を集中し、姿形を変えた。人族にない角や翼をしまい、肌の色も差別を受けない黄色に変え、均整のとれた体を目立たぬ一般的のような体型へと変化させたーー前世の自分、一般的な日本人の姿へと。


「魔力の質は……まあ仕方ないか。疑惑の目をもたれるだろうが魔力量で弁明できるだろう。落ちこぼれで助かったな」


 そう自嘲しつつも変わった体を確かめ、問題がないのを確認するーーよし、大丈夫そうだ。

 それから僕は現在地と方角を調べるため木に飛び乗り、一番高い場所へと登るために跳躍を繰り返し、てっぺんから周囲を見わたした。


「火龍連峰があれだから、現在位置と方角はオッケーと。あとはどの領土にするかだが……海洋国家がいいだろうな」


 左遷される前に調べておいて正解だったな。海との関わりが深い国なら、海上貿易もしているだろうし色々と手に入りやすいだろう。それに様々な文化を持つ奴らが入り混じっているはずから、多少変な行動してもそこまで悪目立ちはしまい。


「まずは規模の小さい村、そしてさびれた漁村だな。港町に入り込めたら最高なんだが……検閲とか検査あるよなあ、きっと。でもまあとりあえずは街道に出て海洋国家側に行く感じだな」


 よし、まずは森を抜けよう。

 さっそく僕は身体強化を使い、木から木へと飛び乗りながら街道を目指した。忍者のように。しかし程なくそんな慣熟も兼ねた曲芸にも飽き、森の恵みを採取しながら進んでいるとーー耳を刺すような音が響いてきた。

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