宝箱

扉が静かに開き、部屋の中へ魔法の光が差し込む。


ダン!


扉の向こうで何かがキラリと光り、次の瞬間には何者かが開きかけの扉目掛けて剣を振り下ろしていた。

!? 

「危な」


俺は咄嗟に声を上げたが、ゴモンは俺の声よりも早く、扉から離れるように飛んで転がった。


何者かの剣が扉を粉砕し、その姿を表す。

それは、白銀の鎧に身を固めた騎士だった。


「な、ガード兵が何で!」


トムスが叫ぶ。


俺は牽制するように槍を突き出すが、全身鎧に対して槍は武が悪いぜ。こんなことならメイスの素振りでもしておけばよかったか。


「おいおいガードってえのは、町を守るのが仕事じゃないのかよ」


ゴモンもガード兵とやらに文句を言うが、残念ながら奴には話は通じないだろうな。

何故わかるかと言えば、俺のGUIには開示スキルの効果で、奴の正体が表示されており、そこには『ガード兵 ゴーレム№4225』と表示されていたのだ。


「残念ながらこいつは人じゃない、ゴーレムだ」

「こいつがゴーレムだって!」


ゴーレムの剣が俺に向かって振り下ろされるのを、槍を使って弾くが、室内では長すぎて使いにくい。


「そんな、だけどなんで俺たちを襲う」


「こいつは、恐らくこの場所専属の警備だ、他の奴が町を守らなかった理由は分からないが、こいつは今ここに居て俺たちを敵と判断した、倒さなければやられるぞ。トムス、エンチャントをかけるから、少しの間で良い、牽制してくれ」

「わ、わかった」


トムスが前に出て薙刀…いや柄が無くなったから形状的にマチェットか?ともかくそれを構えるのを見て、エンチャントをかける。

炎をまとったマチェットで、トムスがゴーレムを威嚇する。

…おや?


「エンチャント」


俺は槍にもエンチャントをかけ、それをゴモンの方へと放る。


「ゴモン、フリで良いから、それで威嚇してくれ」

「お、おう…なんか、こいつ急に動きが変わったぞ」


トムスがマチェットを出したときは、無反応だったゴーレムだが、エンチャントがかかった瞬間に、身構えるように動きが硬くなり、間近の俺よりもマチェットの届かないトムスの威嚇を警戒し始めた。

そして、ゴモンが燃える槍を構えたのを見て、トムスかゴモンかと、露骨に狼狽えだすゴーレム。

なんかチンピラが『近寄るなー』と叫んでナイフ突き付けてきているようだぞ。

ゴーレムが二人に気を取られている隙に、俺は盾とメイスを出して、メイスにエンチャントをかける。

弾かれたように、俺へと向きを変えるゴーレム。

ゴーレムの背を見てか、反射的に槍を突き出すゴモン。


「あっ」


突いた本人が、思わず声を漏らすほどにあっさりと、槍がゴーレムの背を捉え、ゴーレムの動きが止まる。


俺も、今がチャンスとメイスで騎士ゴーレムの左肩を殴りつける。

更にトムスのナイフがゴーレムの脇腹をえぐり、最後に俺が放った兜への一撃を受け、ゴーレムは膝から崩れた。


棍術スキルを取得しました。


お、スキル来た。


「や、やった」

「ああ、やったな」

「勝てる、俺達でも戦える」


トムスの呟きに俺が重ね、ゴモンが声を上げた。


「こいつ、解体スキル使えるか」

「やってみよう」


応えてトムスがゴーレムに手をかざす。

すると、ゴーレムは崩れて消え、その場に黒い塊と金色のコインの山が現れた。


「これは?」

「金貨と鉄のインゴットだろう」

「すげー金だけど、今となっちゃあ使い道があるかも、わからねえなあ」

「そこは町の復興しだいだろ」

「それもそうだな、それじゃ邪魔者も倒したし、中へ入るか」


ゴーレムが居た部屋に入ると、部屋の中には二つの箱が置いてあり、対面にまた扉があったが、部屋の中は殺風景なものだった。


明かりの設備はあるが、補充はせずに新たに魔法の光を生み出す。

俺の魔力っていくつあるんだろうな。


「この箱は宝箱だよな」


ゴモンの言う通り、そこには四角い箱にかまぼこ型の蓋という、これぞ宝箱とでもいうような、古典的な宝箱が置いてあった。


「中身は何だろうか」

「金かアイテムじゃないか?」

「俺は防具が欲しいな」

「それだと個人装備だろ、俺たちは人数が多いからなあ」


そんな話をしながら、ゴモンが鍵と罠を調べる。


「特になし。開けるぜ」


言って開かれた宝箱の中には。


「お、色々入っているぜ」

「どれどれ」


雷の杖       狙った敵に雷撃を放つ。

魔法のカバン(中) 40品目収納可能 

俊足の靴      移動速度上昇 

高速移動      移動速度上昇 

指輪(猫足)    足音が小さくなる

開錠        鍵開けスキル取得

錬金術       錬金術スキル取得

爆発ポーション(5)投げると爆発する

空間収納スキル(5)レベル×5収納


「結構良いな」

「結構どころじゃないぞ」

「もう一つの箱も開けるか」

「そっちは罠じゃないか」


片方が宝で片方が魔物とかありそう。


「なら鑑定しろよ」

「それもそうだな」


宝箱 四等級 

むむ、また謎な表示だ出たぞ。

さっき開けた方は…。

宝箱 三等級


「どっちだよ」

「何が?」

「等級が表示された。だが三より四が良いのか、その逆なのか分からない」

「そういう事かゴモンは?」

「ランクがあった事すら知らなかったよ。ま、どちらにしても宝箱なんだろ、だったら…鍵あり罠あり。普通に考えればこっちの方がいいはずだ」

「なら四が良いのか?」

「どうだろうな…よし、鍵罠共に解除した。開けるぜ」

「おう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る