リックのステータス取得

教会が見えてきたところで、ジェシカとリックを呼んで相談する。


「礼拝堂にある白骨何とかした方が良くないか」

「そうだな、あれは少し刺激が強いな」

「じゃあリックと俺で先に行ってバッグ使ってどこかに移すか」

「そうだな。お~いベン、俺たち先に教会の様子を見てくるよ」

「わかった、俺たちは今のペースでいくよ」


教会についたがドアが開けられている様子もなく、何ら問題なさそうだった。


「まずはバッグの中身を出すか」


礼拝堂の邪魔にならなそうな一角に荷物を出す。


「武器はともかく、キャビネットまで入れていたのか」

「キャビネットに食器を入れると、まとめて一つとカウントされるからな。バッグの収納枠が有効に使えた」

「つくづく不思議な道具だな」


バッグの中身を出したら、代わりに白骨を入れていく。


「裏庭の端でいいか?」

「いや、敷地の外にしようぜ。何かの折に掘り出したくないから、後で燃やしちまおう」

「わかった」


リックが周辺を警戒しながら、俺が骨を移送して隣家の庭に骨を隠す。


「それじゃ出した家具類は、しまって…いや、元あった場所に戻した方が良いか」

「少なくとも食器は、そうしてくれ」

「そうだな」


しまっていた時の俺よ、無駄骨だったぞ。


「死体もまたしまうのか」

「一晩放置したから少しヤバ気な感じだけど、もう一回くらい使うチャンスがあるだろ」


そこまで言って、俺はひとつ思い出した。


「オーク肉は一晩常温保存だったのか?」

「死体はそうだな。でも肉は朝、スキルで解体したから新鮮だぞ」

「そういう物なのか」

「ああ、朝普通に解体したら一晩放置した肉だけど、スキルならその時に肉に変わるからな」

「便利だな」


もっとも、ゲーム時代ならそんなに長くは残らずに数分で死体は消えたのだろうな。


「お、この綺麗な箱は何だ」

「それか、中に玉が入っている。くっくっく、力が欲しいか、ならば触れてみろ」

「…変な声作って危ない事言うな。これ触って大丈夫なのか?」

「俺は大丈夫だったけど、リックがどうかは正直分からん。でもたいした危険はないと思うぞ」

「よし、死んだら怨んで出てやるからな」

「その時は新し呪文を試してみるよ」

「く、触るぞ、触るからな!」


震えるリックの右手人差し指がゆっくり玉へと近づき、ちょんと触れた。


「ああああ、指が玉から離れねえ。ど、どうなるんだこれ」


見る間に玉が輝き、リックを包み込んでいく。


「あああああああ指があああ」


リックの悲鳴が響き渡る。

え、うそ、マジでヤバいの?


「ああああ…あ? 別に痛くはねえな」

「はい?」

「いや、悪い。指引っ張っていたから痛かったけど、引っ張らなけりゃなんともないわ。光が消えたら指も離れたし」

「…じゃ、ステータスって言ってみ」

「ん? ステータス…なんじゃこらああああ」


その頃引っ越し組は…。


「叫び声が聞こえたけど大丈夫なの!?」

「兄さんの声だけだったから、たぶん平気よ」



「なるほど、俺のスキルは木工と鎚と男料理か、武器があればジェシカに負けてないんだな」

「数字の上ではな」


と、そこへ駆け込んでくる足音がひとつ。


「おい、叫び声がしたけど無事か」

「ああ、このアホが一人で大騒ぎしただけだ」

「ね、言ったとおりでしょ」


おや、ジェシカも来たのか。


「ジェシカが抜けて大丈夫か?」

「道中は平穏無事だったからね。でも、おバカさんの声を聞いた魔物が寄ってくるとまずいから、急ぐように言ってくるわ」


ジェシカが戻り、トムスがそれで何があった?という視線を送ってきたので、例の玉を見せる。


「この玉に触れると、自分のステータスを見られるようになる」

「そうなのか、俺にも触らせてくれ」

「どうぞ」


しかし、トムスは玉を触って首をかしげる。


「特に何も変わらないが?」

「そんなはずは…あ、玉の光が無くなっている」


あの指輪の石はゴブリンの石で代用できるのかな?


「この石を玉に当ててみてくれ」

「これは魔石か?」

「ゴブリンから回収したらしい」

「なら、間違いなく魔石だな」


魔石を玉に当てると、指輪の時と同じように光って砕けた。


「この玉は魔石の力で機能するようだな」

「さっきの魔石と同じくらいの石で、俺とリックの二人分だった」

「ふむ。それでこれを使うとどうなるんだ」

「ステータスと言ってみてくれ」

「ステータス…おお、これは」


リックに続いてトムスも見られたか。

後はこれの副次効果だが…。

皆集まったら、また試すか。



「本当に教会に入れるのね」

「今日からはベッドで寝られるな」

「全員は無理だぞ、そこは夜番など決めて、誰か起きていればいいだろ」


皆明るい表情で会話を交わしている。やはり明るいところに出られたというだけでも違うんだろうな。


「ジェシカ、ちょっといいか」

「何かしら」

「この扉開けられるか」


俺が指し示したのは、教会の正面扉。

俺自身は何の問題もなく開けられたが、リックは最初叩き壊そうとしていた。


「開かないわね」

「リックはどうだ」


ジェシカに変わりリックが押すと、扉は何の問題もなく開いた。


「どういうこと」

「リックとトムスに、これを使ってもらった。ジェシカも触ってくれ」


これで四人か。

ゴブリンの魔石で回収できたのは、ジェシカに渡した分を差し引いて残り八つ。

この場の全員がステータス開示を得られるな。

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