第697話 似たり寄ったり

今回の遅刻の理由は、予約投稿のし忘れです……


********************************


 ヘレネの暴走に、リラからの冷たい目線が加わって、私の精神がゴリゴリ削られております。


 おかしい、おいしいお茶とお菓子で癒されているはずなのに。


「大体、あんたはあいつらに甘過ぎ。もうちょっと毅然とした態度を取るべきです」

「いや、でも」

「今のあんたは、あいつらに舐められてるのよ」

「えええええ」

『そんな! 舐めてなどいません!』

「ヘレネ……今もこの会話にしゃしゃり出てくる時点で、私の事も舐めているのよ」

『ええええええええ』


 ヘレネも、リラからの説教の対象になった模様。


 その後、たっぷり一時間はお小言をくらいましたとさ。




 リラによるお小言大会が終わる頃、カストルから探索が終わったと連絡が入る。


『やはり、下に何か建物らしきものがありますね。先行して調査したいと思いますが、よろしいですか?』

「うん、お願い」

『それと――』

『レラ! 私も行くからね!!』


 ああ、ニエールも同行すると言って、カストルを困らせているのか。


「カストル、催眠光線の使用を許可します」

『ありがとうございます。では、食らってください、催眠光線』

『うぎゅ』


 いや、別に技名のように言わなくてもいいんだけど。私が使う際によく言ってるのは、ノリのようなものだから。


 カストルにより地下から移動させられたニエールは、そのまま移動宿泊施設のリビングにあるソファに転がしておいた。


「まったく、懲りないなあ」

「魔法関連の人って、似た部分があるのかしら?」

「え? そう?」


 ニエールに似た研究員なんて……大量にいるか。


 でも、リラが言ったのは彼等の事じゃなかった。


「あんたも、懲りないでしょ?」


 何も言えない。




 カストルが下の建物内を探索するのに、更に一時間ほど。その間は、映像を録画しておいてもらった。後で見ようっと。


 で、その探索が終わったらしい。


「めぼしいものは何もなし……か」

「地下の建物の周辺探索もしたそうだけど、ガラクタばかりだっていうしねえ」


 リラが溜息を吐く。今回の遺跡探訪は、子供達を見つけた事だけが成果かな。


 カストルの言うガラクタとは、本当に石材の破片とか、金属のゴミとからしい。魔法に関するものが何もなかったんだとか。


 ニエールを起こして伝えると、何と信じないと言い出した。


「私が行って見てみるまで、何もないなんて信じないいいいいいい!」

「カストルが映像を録画しておいてくれたから、それを見な」

「実際に見るんだあああああああ……」


 何にもないって、言っただろうが。


「録画を一部見たけれど、前の遺跡みたいに工場らしき建物が埋まってただけだよ」

「えー? 何それつまんなーい」


 だから行く必要はないと言っているのに。ちょっとイラッとしてきた。




 空振りが二回も続くときついね。とりあえず、カストルに引き上げてきてもらって、全員で船に戻った。


 執務室では、カストルからの報告を受ける。同席したのは、リラのみ。気安さから、愚痴をこぼしたらカストルが苦笑した。


「ですがユントリードにある遺跡の数は百近くありますし」

「そんなにあるの!?」


 知らなかった。どうやら、東の古戦場に近い分、昔は前線基地……の手前にある、軍需施設があった辺りではないか、というのがカストルの読みだ。


「そう考えますと、地下にあったのは頷けるかと」

「敵からの攻撃を避ける為……か。子供向けの、おもちゃの工場まで?」

「戦争中でも、子供には夢が必要でしょう」


 確かに。ちなみに、今回の工場はやはり製鉄関連ではないか、との事。戦争中の製鉄工場って、重要拠点じゃない?


「鉄を使った武器が主な攻撃手段でしたら、そうでしょうけれど」

「魔法が主な武器だった場合、製鉄工場はそこまで重要じゃないと?」


 カストルの意見に付け加えられたリラの言葉に、カストルが頷く。


「実際、あの工場で作っていた鉄製品は、武器製作用のものではないと思います」

「根拠は?」

「上の層から出たという、変化させやすいのに固く薄い金属ですね。あれを主に作っていたようです。さすがにあの薄さでは、砲台などは作れないでしょう」


 なるほど。薄過ぎて、銃にも無理じゃないかという話。多分、ご家庭で使う何かを作る素材を作っていたのだろうとの事。


 前線で、ご家庭の品を作るの? 何か変じゃない?


「推測でしかありませんが、工場の場所をまとめたのではないでしょうか」

「それで、軍の物資もご家庭のあれこれも、一緒に作ってたって事?」


 リラの呆れた様子に、カストルが苦笑する。まあ、推測だからね。おかしくても、当時の為政者達が何を考えていたかなんて、私達にはわかるはずもないし。


 そういうのは、専門の考古学を研究している人にでも、任せましょう。




 子供達が見つかった遺跡にはもう用がないので、次の目的地を決める事になった。


「もう、カストル達に先に探らせて、おもしろそうなものがある場所だけ行けばいいんじゃない?」


 コーニー、効率的だけれど、それもどうなのよな内容の提案だね。


 でも、反対する人が誰もいないので、それでいくか。


「ユントリードの議員は、それでも構わないのかな?」

「問題ないでしょう。彼等はランザ達を怒らせる事をとても恐れているようですから。現に、子供の福祉に関わる法案をすぐに作成して、議会に提出したようです。おそらく、今年中には決まるかと」


 早。出来るならさっさとやっておきなさいよねー。


 とりあえず、ユントリードに発行してもらった遺跡への立ち入り許可証は、国内のどの遺跡でも大丈夫らしい。管理、ザルじゃね?


「では、ドローンを使って魔力の強い遺跡を探し、ある程度何が埋まっているかを探りましょう」


 今までみたいに行き当たりばったりでやっていると、時間がいくらあっても足りないから、コーニー提案の方法になりましたー。つまらん。


「レラ? あまり本領を留守にすると、ここまで書類が追いかけてくるんじゃない?」

「ひえ!」


 何で怖い事を言うんだコーニー!


「だから、懲りないって言ったでしょ?」

「リラまでー」


 酷くね?




 今回は複数箇所の遺跡を同時に探索するので、待つのは一日程度でいいそうだ。今までの事って、一体……


「効率化を考えれば、これが最適解だったってだけの話でしょ? 今までの事も、全て無駄という訳じゃないわ」

「珍しく、リラが優しい……」

「『珍しく』は余計です!」


 現在、全員でグラナダ島に来ている。王女殿下のリクエストだ。また来てみたかったんだって。


 東のカイルナ大陸にいつまでいるかわからないけれど、戻ったら自分の進路……というか、これからどうするかを決めないといけないからなー。


 人生の選択って、重いよね。


 グラナダ島には、各地から連れてきた難民達が暮らしている。彼等だけでこの島の経済を回せるように、色々とカストルが手を回しているらしい。


 あいつ、いつの間に経済なんて概念、覚えたんだ? 研究馬鹿だったご先祖様やそのお友達が、その辺りを教えたとは思えないんだけれど。


「私も、日々学習しているのです」

「おう!」


 いきなり背後から出て来て答えるの、やめて。


 今、グラナダ島のメインストリート沿いにある店にいる。小物を扱っている店なんだけど、中々民族色が出ていていい。


 広くない店舗なんだけど、店員の死角があるようで、そこにカストルが移動してきたという訳。


「主様、あちらの方の探索がそろそろ終わりそうです」

「お、そうなんだ。早かったね」

「いくつか問題が発生していた遺跡がありましたが、ドローンに遮光結界を使わせた結果、問題行動を起こしている連中に気付かれずに探索が出来ました」


 待って。他の遺跡でも問題が起こってたの?


「それと、遺跡で魔力持ちの子が複数人、見つかっています」

「また?」

「どこも、似たような事を考えるようです」


 なんてこったい。

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