家を追い出されましたが、元気に暮らしています~チートな魔法と前世知識で快適便利なセカンドライフ!~(旧題 家を追い出されましたが、元気に暮らしています)
第623話 ビデオ会議 in 旧ゼマスアンド王宮
第623話 ビデオ会議 in 旧ゼマスアンド王宮
さて、ではどうやって南側の腐った連中を始末するか。
「大公殿下の強権発動で一掃しちゃえばいいのでは?」
「さすがに、戦勝国から来た私がそれをやると、まともな北の領主達にも反発されかねないよ」
そうかなあ。案外「よくやった!」と褒められるかもよ?
でも、今の殿下の立場だと、確かに確約のない事はしたくないか。それは理解出来る。
「なら、北の領主が強権発動に文句を言わず、反発もしないと約束してくれたら、やってくれます?」
「え? どうやってそんな約束を?」
「寝ている北の領主の枕元に、南側の腐った連中一掃するけれど、北とは仲良くやっていきたいから、反発しないでくれる? ってお手紙置きましょうか」
「やめて! 本当、絶対にやめるように!」
えー? いい手だと思うんだけどなあ。
「侯爵……彼女って、いつもこんな感じなのかい?」
「概ね」
む。大公殿下に聞かれたヴィル様が頷いているよ。ちょっと! リラまで頷いてるのはどういう事!?
「リラの裏切り者」
「その前に、己の所業を顧みよ」
えー?
「こっちの大陸で、その手を何回使ったか数えてみたら?」
そんなに使っ……たね。でも、一番手っ取り早くて確実な手なのにー。
「目が覚めて、枕元に見知らぬ手紙……それも、新しい上司からのものなんぞがあったら、心臓止まるわ」
まあ、上司からの手紙と思ったら、そうかも?
結局、北の領主達とは密談というオーソドックスな手を使う事になった。しかも、領主達は自身の領地にいたままで。
ええ、ここでも大活躍ですね! 通信機。ただし、今回は私がサポートするので、大画面で相手の顔を見ながら話せるよー。
「え……本当にそんな事が出来るのかい!?」
「出来ますよ。オーゼリアでは、割と知られた技術です」
何せ、王宮にも映像付き通信機を納入しているからね。うちじゃなく、ペイロンの研究所が。
王宮の特別仕様として、画面が大きいやつを開発したら、新国王陛下に凄く喜ばれたらしい。
何でも、上王陛下ご夫妻の隠居所にも、三台ほど贈ったそうだから。てか、親のところに三台って。
まあ、両親に孫の姿を見せられるのは、嬉しいのかもね。陛下のところにも、コアド公爵のところにも、お子さんがいらっしゃるし。
それはさておき、当然北の領主達の元にもサポート役が必要です。なので、今回はムーサイに出張ってもらいました。
普段は別のお仕事をしている彼女達に、今回特別に出張してもらったんだ。後で出張手当、出さなきゃ。
ちなみに、何故人数がいるネレイデスではないのかといえば、サポートするにもそれなり魔法の腕が必要だから。ネレイデスよりムーサイの方が、魔法に長けてるのよ……
ただ、困った事にカストルとムーサイを総動員しても手が足りず、結局ヘレネとネスティまでかり出す始末。
『主様、俺はー? ねえ、俺はー?』
日頃の行いが、こういう時にものを言うよね……
遠いデュバルの地で、ポルックスが「酷いー」と叫ぶ姿を幻視した。
北の領主達十二人に対し、大公殿下の直筆の手紙を携えたカストル以下十二人の使者を送り出す。
カストル、ヘレネ、ネスティは自力での移動魔法を使えるから、ムーサイ達を三人ずつそれぞれの担当領主の元へ送ってもらった。
十二人のうち、最低でも七人は話を聞いてビデオ会議……じゃなくて、映像付き通信会議に参加してくれればと思う。
話を聞いてくれさえすれば、説得する自信があるから。逆に、私の話を聞いても南の領主を支持するようなら、領主でいる資格はない。南と一緒に一掃されるがよい。
大公殿下と、通信を繋げる部屋で待機していると、続々と報告が入ってきた。
『ツイージ伯、了承いただけました』
『リモタリューン伯、了承いただけました』
『リレント伯、了承いただけました』
『ヒンガン伯、了承いただけました』
『ヴィゼー伯、了承いただけました』
『プーロス伯、了承いただけました』
『ニレバム伯、了承いただけました』
『マウポーゼ伯、了承いただけました』
『ウロアド伯、了承いただけました』
『スアド伯、了承いただけました』
『アザフ伯、了承いただけました』
『リッツ伯、了承いただけました』
続々と読み上げられる名前に、大公殿下が面食らっている。
「まさか、本当に北方十二伯からの了承を取り付けるとは……」
「何です?その北方十二伯って」
「そのまま、旧ゼマスアンドの北方に領地を持つ、武闘派の十二の伯爵家の事だよ。南は六、東に四、西に七の伯爵家だったかな」
北だけ多いんだ。理由としては、北の領地は一つ一つが小さいらしい。
「すぐ北がリューバギーズだからね。国境を護る為に、わざと領地を小さくしているって話だよ」
「南も、ゲンエッダと国境を接してますよね? なのに、大きな領地でいいんですか?」
「リューバギーズと旧ゼマスアンドは似たような大きさの国なんだ。その二国を合わせたよりも大きな国土を持つのがゲンエッダ。どちらとより戦争になりやすいと思う?」
「……普通に考えたら、リューバギーズですね」
「だろう? だから、南は武力を誇るより、いかに我が国とうまくやっていくかが重要になる土地なんだ」
その割には、腐った領主ばっかなんだが。
あれか? ゲンエッダにはこびへつらう形だけとっておけばいいしー、リューバギーズには武力ちらつかせておけばよくなーい? ってか? けっ。
ともかく、十二人いる北の領主達全員から映像付き通信会議への参加了承が取れたのだから、早速会議開始だ。
空中に現れたスクリーンにまず皆が驚き、次いでそこに映る面々に驚く。
「こ、これは……」
『なんと……』
『おお、こうなるのか』
声を出せる人はまだ豪胆で、半数以上が言葉も出ない状態らしい。ちなみに、大公殿下も声が出ない一人。
「殿下……殿下!」
「え? あ、ああ」
「会議開始の挨拶をお願いします」
「う、うん。しょ、諸侯らにはおいては、健勝そうで何よりだ」
そこから? 一言「会議を始める」でいいんじゃないの?
とはいえ、口は出さない。私が口出しするのはこの先だ。
「――である。では、会議を始めよう」
やっとかよ。
『その事ですが、大公殿下。南の諸侯達が不正をしていたという話ですが、証拠はあるのでしょうな?』
「ありますよ。不当に領民に重い税を課して、領民が飢えて盗賊にまで成り下がりました」
私の言葉に、またしても画面に映る連中が驚く。
『……殿下、差し支えなければ、その女性がどなたか、伺ってもよろしいか?』
「そうか……そうだよね……彼女は、海を越えた大陸にあるオーゼリアという国から来た、デュバル女侯爵だ」
『な!』
『何と……』
この場合、どこに驚いてるんだろうね? 海を越えた国に? 若い侯爵家当主に?
それとも、女が当主……しかも侯爵家の当主をやっている事に対してかな?
一番最後の場合、側にいるサポート役の子達の拳が火を噴くぞ?
どうにか全員、気力で持ち直し、驚いた事はとりあえずスルーする事にしたらしい。賢明な判断……かな?
『その、盗賊になったというのは』
「襲われたのは私が乗る馬車です。こちらの大公殿下の元へ参る途中でした」
『うぬう。して、その領民は、今どこに?』
「自分の家ですよ。長い事満足に食べられなかったようなので、炊き出しをしておきました。今も、多分こちらの用意した食料で満足に食べられているはずです」
『は?』
『……あの、侯爵閣下の馬車を襲った……の、です……よね? なのに、無罪放免にした……と?』
「彼等は困窮した結果、どうにもならずに悪事を働こうとしたんです。実際、私の馬車を襲おうとしましたが、こちらは無傷のまま捕縛しました。事情を聞けば、領主の怠慢と驕りが原因で生活苦になっているというではありませんか。そのような者達を、見捨てる訳には参りません。ましてや、盗賊として処罰など!」
背後から、リラが小声で「演技過剰」って言ってるのが聞こえる。うるさいな! おっさん達には女の涙が利くんだぞ? 嘘泣きだけど。
手にしたハンカチで顔をかくし、涙にくれる姿を装う。隣の大公はすっかり騙されてくれているけれど、私という人間をよく知っているヴィル様やリラはしらけた様子だ。ユーインですら、目をそらしている。酷くね?
まあいいや。画面の中のおっちゃん達はころっと騙されてくれたようだから。
『南で、そのような事が……』
『大体、あやつらはいつも傲慢な顔をしているではないか! 自身の領民を痛めつける事など、いくらでもやりそうだ!』
『それに、ゲンエッダの装飾品をこれでもかと使っているな。あの金がどこから出ているのか毎度不思議ではあったが、そういう事か』
よしよし、十二人のおっちゃん達は、こちらの思い描いた通りの反応をしてくれている。
「そのような領民の困窮を救うべく、大公殿下が断腸の思いで彼等を一掃する事になさいました」
『え? 一掃?』
あれ? おっちゃん達が目を丸くして驚いている。言葉を選び間違えたかな?
それはともかく、何か後ろで噴き出した声が聞こえたんだが? リラだね? 後でお話し合いでもしようか。
いや、まずはこの場を何とかしなくては。内心冷や汗をかいていると、隣の大公殿下が咳払いを一つして空気を変えてくれた。
「と、ともかく! 私はゲンエッダ国王陛下より与えられた権利を行使し、南の領主達をその任から解く事を決めた。諸侯には、理由と処罰を了承してほしかったのだ」
やっとこの会議のテーマに行き着きましたね。おめでとうございます。後、空気を変えてくれてありがとうございます。
大公殿下の言葉を聞いたおっちゃん達のうち、一番年嵩っぽいおっちゃんが口を開いた。
『なるほど……大公殿下。ここにご慈悲に縋りお許しを請いたく、また、心より御礼申し上げます』
「リッツ伯……」
ほう、あの厳つい年嵩のおっちゃんはリッツ伯というのか。
「他国よりいらした殿下に対し、隔意があった我々にすら、お心を砕いて配慮してくださった。その恩情は、我等北方の者達全て、決して忘れは致しません」
「……私は、当然の事をしたまでだよ。諸侯らとは、これからもこの地の為に、手を取り合ってやっていきたいと願う」
『ありがたきお言葉、畏れ多い事にございます。して、そのお言葉に甘え、一つお願いしたい事がございます』
「何だろう? 私に出来る事なら」
『南の愚か者共を処罰する際、その場に我等十二人も立ち会わせてはもらえますまいか?』
おおっとお? これは、南の領主の公開処刑決定かなあ?
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