恋する乙女はメイドな生徒2
硬く水を絞ったモップに力を込めて、リビングの床を丹念に磨いていきます。
大理石が敷き詰められた一面は日が高い時間であれば太陽を跳ね返して部屋全てを光で満たして、自然の暖かさが心の疲れ癒してくれる。
日頃公務でお疲れの旦那様が寛がれる大切なお部屋です、埃の一つも残すわけにはいけません。
テーブルも布巾で艶が出るまで磨き上げて、リクライニングチェアーも朝のうちに干しておいたクッションを敷き詰めておきます、それから花瓶の花が萎れてきてますから代えておきましょう、花を綺麗に生けるのもメイドの嗜みですから。
「アイリス、手が空きましたら次の仕事をお願いします」
エリオットさんが私を呼んでいます。
「かしこまりました、すぐ行きます」
普段は私を様付けで呼んでくださるエリオットさんですがメイドで服を纏っている間だけは上司と部下です、一人の使用人として扱ってもらえるのはむしろ嬉しく思えます。
「今日は天気が良かったですから洗濯物の乾きが良くてつい欲しすぎてしまいました、手間をかけて申し訳ないですが全て畳んでしまっておいて下さい」
リネン室に積まれた衣服の山を指して指示を下さります。
なかなかに手強そうな量ですが、俄然やる気が湧いてくるのも本当です。
「かしこまりました、お任せ下さい」
「すみませんね……実はねアイリス、旦那様は貴女が整えた服を着るとすぐに分かるそうです、丁寧に心のこもった仕事をしてくれていると仰ってました」
「旦那様が?」
「そうです。たかが洗濯と手を抜くことなく仕事に向かうアイリスの誠実さは必ず伝わっています、その調子でよろしく頼みますよ」
「お任せ下さい、心を込めて承ります」
「私は残りの雑務をしています、では後ほど」
エリオットさんは周りに疲れを見せることは決してないけど、学生の私と違って何倍もの仕事をこなしてらっしゃる。
そもそもこのお屋敷に使えるのは通いの庭師を除いたらエリオットさんと私だけです。
学生としての時間を使わせて頂いている分、メイド服に袖を通している間は仕事に邁進しなくては!
「よし頑張ろう、少しでもお役に立たなくちゃ」
拳を握って気合いを入れると早速仕事に取り掛かります。
一枚一枚皺を伸ばして折り目を揃えて、単純な作業ですが綺麗に仕上がると自画自賛でやる気も出てくんです。
「旦那様、今日も喜んでくれるかな」
敬愛する主人が服を纏う際に気持ちよく着こなせるように私は心を込めて仕事に励みます。
誰かの為に奉仕出来る事が今の私にとって間違いようのない幸せだからです。
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