第7話 僕のオタクライフは守れるのか!?


 高校の正門前にお迎えの車がずらっと並ぶ。

「ミコ、また明日」

「まったなー、烈」

 僕は車の扉を開けるイチに挨拶し、ベンツに乗り込む。

「あれ? 姫も来たの?」

 助手席に鬼姫がいた。

「はい。今日からイチと共に宮組のSP室がある五十九階に移ります」

「えっ、イチも!」

 僕は運転席にいる杉山すぎやまいちの顔を見た。

「はい。私も姫姐さんと一緒にお嬢の世話係に入りました。なんでも申し付けてください」

「嬉しいけど……桜山組は大丈夫なのか? 若手トップ2が宮組に出向なんて」

「お嬢のいるところが私にとっての桜山組ですから」

「もう、イチ。だから僕はヤクザを継がないって言ってるのに」

「でも宮組の命運を紅組長と握っているのはお嬢です」

 イチがにっこりと微笑む。

「そういえばお嬢、宮組の血痕式けっこんしきについては聞きましたか? 結婚式の後に血痕式があるそうですね。お嬢、オタク道を続けるチャンスですよ!」

 鬼姫が明るい声で振り向いた。

「知ってる。でも紅に暴力を振るうなんて……」

「紅組長に暴力を振るう必要なんてありません。闘いが始まったら即オトせばいいんですよ! 宮組には道場もありますから血痕式まで訓練しましょう!」

「そ、そうか。そうだね、紅に暴力を振るわなくても、それなら大丈夫だよね」

「そうです。先手必勝ですよ、お嬢! そうすれば夢のオタクライフですよ! 宮組の資産でアニメ会社を興したり出来ますよ! 一生漫画を描いて暮らせますよ!」

「それ、いいね! 僕、頑張るよ!」

 宮組のフロント企業には既に有名アニメ会社があるのを鬼姫もイチも知っていた。

 僕が知らなかっただけで。

 紅が言っていた宮組フロント企業が、まさかそんな大手の会社だなんて僕は思わなかった。

 鬼姫は窓の外を見ながらニヤリと笑った。

 その顔は僕には絶対に見せないあくどい表情だった。

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