アンティークショップ


泣きながら家の近くの公園まで走った。

私はタオルを出し、顔を拭いた。


もう、こんなんじゃ帰れないよ。

ちょっと寄り道していこうかな。


駅まで歩くと知らない雑貨屋さんがあった。

薄暗くて中が見えない。

「こんなところにあったっけ?」

首をかしげながらドアを開けるとチリンと鈴がなる。

中は雑貨屋ではなく、古そうなものばかりが置いてある。


「あぁ、雑貨屋というよりアンティークショップかー」

アンティークショップは高いってイメージがある。

商品を壊さないようにそーっと見ながら見ていく。


少し奥の方にいくと手鏡が飾ってあった。

深い紫色の鏡だ。


「お気に召されましたか?」

ドキッとした。

不意に後ろから声がしたから。

「あっ、はい。きれいな鏡ですね」

なんの足音もなく来たから、すっとんきょうな声で応えてしまった。


「世界にひとつしかない一点物ですよ」と、赤い口紅が印象な女性がそこにいた。

ここの店主だろうか。

お財布には少しのお金しか入ってない・・・。

「お金の心配はいらないわ、あなたが大切にしてくれたらそれで構わないわ」

見透かされた気持ちになった。

恥ずかしかった。

「でも、ただでは困りますので払います!」

お財布から1500円を出して店主に渡す。

「足りなければまた持ってきますから!」

すると店主の赤い唇がニコリと微笑む。

「これで充分ですわ」


鏡が気になって近くの公園に行った。


ブランコに座ると鞄から紫の鏡を取り出した。

鏡に自分の顔を写すと頭に包帯を巻いている自分がいた。


「お母さんが優しくなってくれますように」

鏡に向かって呟いた。


なーんてね、あり得るわけないか!

また、今日も怒鳴られるのかな?

殴られるのかな?

何をされるんだろう・・・。


涙が出た・・・・。

紫の鏡に落ちた。

キラリと光って宝石のようだった。



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