第36話 冒険者ギルド

 人化の為の建物を出たら、そこを起点にメイン通りがあるようだ。

 この建物を端にして10mほどの広い道幅の両サイドに、いろいろな商店が並んでいる。


 生活魔法の【ライト】を使ってるのか、魔道具なのかは不明だが、通りには街灯があり、商店も開いている店はどこも明かりが灯っていて煌びやかだ。


 異世界スゲー! 俺の感想はその一言だった。


 建物はレンガ造りのような物が主流で、違う造りの建物も全て土壁だ。水中なので木は貴重なのかな?

 建物内部には使われているようだが、外面は全て土がメインの建築のようだ。


 キョロキョロと景観と雰囲気を楽しんでいると、ナビーが声を掛けてきた。


『♪ マスター、個室の使用時間に制限があります。60分を過ぎると強制転移で大部屋に出されてしまいます。急いであげないと後が面倒ですよ?』


『そういえば、速やかに出るようにとアナウンスされてたな。でも、時間のことは言ってなかったけど?』

『♪ 普通は60分もあの着替えるだけの部屋で居座る人はいませんからね。10分前に警告のアナウンスが流れるようにはなっています』


『急がないとあと20分ほどしかないよね?』

『♪ ですね。すぐに連絡してこなかった彼女たちに非がありますが、恥ずかしいという気持ちは理解できないこともないので急いであげてください』



 魔石の現金化が最優先ということで、すぐ近くの冒険者ギルドに入った。

 門をくぐってすぐの場所に在るのは利便性の為かな?


 貫頭衣を纏ったいかにも初心者です! とバレバレな俺に、何人かが近寄ってきた。


「お前新人だね? いろいろ教えてあげるから、俺と組まないか?」

「おいおい、なに抜け駆けしてるんだ? お前も来たばかりの新人だろうが? すっこんでろ!」


「ねぇ君! そんなむさ苦しい奴より、お姉さんとお話ししない?」


『♪ マスター! 全員却下です! マスターのステータスを聞いて、有用なら仲間に引き込もうとしている、新人の雑魚たちです』


『まぁ、この町にいる時点で全員が新人だよね。むしろ新人じゃないとかの奴は、そんな長いことこの町で停滞している、ダメな奴としか言いようがない連中だよね?』


『♪ ふふふ、分かってらっしゃる。そのとおり、2人を待たせるのは可哀想ですので、無視しましょう』


「悪いが連れを2人待たせている。仲間も既に居るのでこれ以上必要ないし、情報源も居るので問題ない」


「何だ!? 既に外で経験者と接触済みか! チッ……」


 現金なもので、ベテランの仲間が既にいると思った瞬間、外の商人と同じようにすぐに離れていった。



「冒険者ギルドにようこそ。新人の方なら説明はお要りですか?」

「後で仲間を連れてもう1度来るので、その時にお願いします。今回は魔石の換金をお願いしに来ました」


「ギルド員でないと、換金はできません。会員になられますか?」


『ナビー? どうしたら良い?』

『♪ マスターの特性を考えれば、どのギルドでも大成できますが、冒険者ギルドが最も適しているでしょう。迷わず会員にお成り下さい。説明はナビーがしても良いですが、後で2人も連れてきて一緒に聞いたら良いかと……』


『他にも違うギルドがあるのか? まぁ、後で良いか……分かった。そうする』


「はい。それと換金してすぐ服を買って、後二人連れてきますので、詳しい説明はまたその時に一緒に聞きたいのですが、宜しいでしょうか?」


「成程、女子が仲間に居るのですか? 誰かから情報を得ていて、ここのことを知っていたのですね。了解しました。隣の買い取りカウンターに行って、お売り下さるものを出しておいてください。その間にあなたのギルドカードを発行しておきます」


 皆まで言わなくても、このお姉さんは察してくれたようだ。急ぎの理由まで分かってもらえているようで、効率よく手配してくれた。


「魔石はここのトレーに、食材や解体前の魔獣なんかはこっちに入れてくれ」


 買い取り担当の40歳代のおじさんの指示に従って置いていく。


「女子2名が着る服とか一式買うとどれくらい要りますか?」

「物によりけりだな。この町は初心者用なので、それほど高いものは扱ってないかな。女子の相場は分からんが、男物なら1万ジェニーから3万ジェニーもあれば揃うんじゃないか? 安くはないけどな」


 この町自体に生産性はないそうで、ここの服は全て地上で生産された物らしい。地上世界もあるとか……何やらいろいろまだ知らない情報も有りそうだ。後で詳しく聞く必要がありそうだが、今は時間がない。


 とにかく服は安くはないそうなので、属性持ちの魔石以外は全て売ろうかな。


 サメの魔獣も良い値で買ってくれるそうなので、魔石も含めて売ることにした。ところが、隣からさっきの受付のお姉さんがやってきて、幾つか待ったを掛けてきた。


「あなた、仲間が居るのよね? 討伐依頼をこなすと、ギルドランクっていうのがあって、それが上がるの。このスライムとウニとサメの魔獣があれば1つランクを上げられるのだけど、それにはギルドカードの提示が必要なの……」


 困ったな。魔石を売らないと服は買えない。

 でも売っちゃうと、そのままパーティーとしてランクを1つ上げられるのに、俺だけ上げるのは勿体ないらしい。


 そのことをコール機能で2人に話したのだが、どうしても外に出るのは嫌だとごねられた。



「だそうですので、仕方ないので売ります……」

「う~~ん。あなたを信じて、お姉さんがお金を貸してあげます! 初心者用のコートをまず買いなさい。これでレベル相応なモノが3枚買えます。コートを貫頭衣の上に羽織らせて友人をすぐ連れていらっしゃい。現物は一旦返しておくからちゃんとお金は返してね」


 お姉さんは、そう言って俺に3万ジェニー貸してくれた。


「おい、レスカ! お前初対面でなに金貸してるんだ? どうしたんだ? いつものしっかり者のお前らしくないぞ?」

「う~ん、彼なら貸しても大丈夫な気がするのよね……何故か知らないけど、構いたくなったの。私3カ月後にはギルドの勤務地が変わるでしょ? その頃また会えそうな気だするのよね……」


「おいおい、お前の移動先って王都だろ? レベル50以上じゃないと入れないんだぞ? この華奢な子じゃ、ちょっと王都は厳しいんじゃないか?」



 失礼なおっさんだ! まぁ、確かに華奢だけどね!


 レスカさんは、普段は冷静沈着で、決してこのような愚行はしないそうだ。

 お金を貸すメリットがないのに自分からお金を貸してやるとか、馬鹿だと買い取り担当の男性は言っているが、俺もその意見に同意だな。


「あの……本当に良いのですか?」

「ええ、信じて待ってるわ。時間が無いのでしょう? 60分で外に強制転移されるわよ?」


「はい。では、少しの間お借りします。2人を連れてすぐ戻りますね」


 *******************************************************

 お読みくださりありがとうございます。

 次回はいよいよヒロインたちの容姿の公開です。


 PR:新作『転生先が残念王子だった件』投稿始めました。

   こちらのほうも是非読んでみてください。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る