第29話 MAP共有

 ミーファの血の匂いが漂ってるエリアから抜け出し、新しい拠点を探すことにしたのだがどうしたものか。


「どうしようか? 幼生らしく浮遊して過ごしてみる?」

「「今更イヤ!」」


 即答で2人に拒否られた。


「だって、プランクトンとかより貝とかカニの方が美味しいでしょ?」

「私も昆布とかワカメやエビの方がいいです」


「エビ!? お願いだから食べないでね!」

「ちーちゃんは食べないわ。安心して」


「実際どうしようか? 皆のサイズ的に岩礁地帯は敵も多くて危険なんだよね……」

「どこがいいのでしょう?」


「砂地と岩礁地の境目辺りにする? 多少危険が下がるよ」

「ナビーちゃんに聞いてもらえるかしら?」


 成程……その手がありました!


『ナビー、どこか良い場所ないか?』

『♪ すぐ近くに、イイ感じの岩陰があるのですが、マスターたちは『魂石』や『魔石』集めはしないのですか? まずそれをお決めください。それによって最善の場所が変わってきます』



「ナビーが先に魂石や魔石集めをどうするのか話し合えってさ……それによって最善の場所が変わるそうだよ」


 ちーちゃんは思いつめたような声でミーファに質問した。


「ミーファは、人を襲って『魂石』奪える?」

「必要なら行いますが、ヤクモやちーちゃんみたいな人と判断したら、殺すことはできないと思います」


「私たちもミーファを殺して奪えなかったしね……どうしようか? こんな甘いことじゃ、いつまで経っても人になるどころか、町にも入れないよね?」


『♪ 仕方がないですね。危険ですが、人を襲わず魂石を得る方法は幾つかあります』

『え!? そうなの? 教えて……』


 少し危険もあると前置きして教えてくれた。


 成程……確かに危険だな。でも俺たちにはかなり有効な手段だ。


「えとね、ナビーがちょっと反則気味な方法を提示してくれたけど、ちょっと危険なんだ」



 その危険な方法は次の2つだ

 ・ミミックシェルを【周辺探索】でピンポイントで狙って狩る

 ・転生者を襲って食った魔獣やその他の一般捕食者を狙って、体内にある魂石を奪う


「どっちの方法も転生者を喰ってる奴が相手だから、おそらくレベルも高く、今の小さな俺たちからすればかなり危険だと思う。魔獣や捕食者の方は取り込んで直ぐじゃないと、魂石は吸収されて無くなっちゃうそうだから確実ではないかもね。それに人が喰われるのを待っているようでなんか嫌だよね。でも、ミミックシェルはかなり美味しいかもしれない。下手したら一度で数個ってことも有り得そうだよね」


「どっちも【周辺探索】のスキルがあるから可能な案ですね。ヤクモ的にいけそう?」

「う~ん、いけそうな気もするけど、やっぱ怖いよね。命がけになると思う」


「そこまでする必要あるかな? 襲われた時とか機会がある時だけ狩るのじゃダメなの?」


「ダメってことはないけど、それだと本当に歳食っちゃってしまうよ。ちーちゃんの気持ちも分かるけど、年老いると動きが鈍くなるし、戦闘は困難になるから、襲われるのを待っているだけっていうのは、もう人族になるのを諦めるのと大差ないよね」


「転生者の魂石が魔獣の体内に残ってる期間ってどのくらいなのでしょう?」

「魂石も魔石も大体数時間だって……すぐに取り込まれちゃう場合もあるそうだから確実じゃないそうだよ」


「じゃあ、やはりミミックシェルを狩るのが良いのでしょうね」


 とりあえずミミックシェルが多くいる砂場の方に移動した。



「拠点なんだけど、砂場と岩礁地帯の境目辺りにしたいんだけど良いかな?」

「「いいわよ」」


「一応理由を言っておくね。ミーファは海藻類が多い岩礁エリアの方が本来過ごしやすいんだけど、今はまだ皆が小さいのでやっぱ避けておくね。ミミックシェルは砂場に良く居て、2枚貝に擬態してるんだって。そして餌と思って近づいたらバクッて喰われるそうだよ。なのでどっちにもすぐ行ける中間エリアに拠点をおこうかと思う」


「それでいいわよ。何も反対する理由はないね」

「うん。砂場だと隠れる箇所が少なそうですものね」


 移動の際にミーファに乗せてもらっているのだが、やはりタコやエビなんかと俄然速度が違う。


「ミーファ重くない?」

「水中なので軽いわよ。気にしなくていいのよ?」


 俺たちは目に付いた海藻類はどんどん俺の【インベントリ】に保管していっている。

 3日は大丈夫だろうという量を既に確保している。


「ヤクモの【亜空間倉庫】便利よね。それがあるおかげでいつも新鮮なものが食べられるってことでしょ?」

「うん。腐らないからね。だから海が時化た時のことも考えて、こうやって数日分の海藻類を集めているんだよ。食料は腐らないのならいくらあっても困るモノじゃないからね」


「そうね……あ! じゃあこれも入れといて。私の大好物なの!」

「トサカノリだね。俺も好きだよ、これポン酢で食べると凄く美味しいんだよね。高知県の馬路村産のゆずぽんっていうので食べたら最高だったよ」


「聞いたことのない地名……ヤクモの居たニホンって所の地名?」

「そうだよ。そこの土地で採れるもので作った特産品と言った方が分かりやすいかな?」


「ええ、エルフの国でも特産品は色々あったわよ。一番貴重で最も有名なのが世界樹の葉やその枝とかかな」

「「世界樹! お約束だね!」」


「ニホンにもやはりあるのね? 流石モデルになった世界ね! 凄く貴重なのに!」


「「…………あはは」」


 いずれ説明するけど、ラノベって何? からの説明は、今は外なのでちーちゃんと2人、笑ってごまかしてしまった。


「あ、ウニだ! 八雲君! あのウニ食べられないかな?」

「どれどれ……俺の鑑定魔法では美味ってでてるね。食べてみようか?」


「うんお願い!」


 ちーちゃんはウニを御所望だ。



 うわ~トゲトゲだ……俺の皮膚は柔らかいから上手くやらないと刺さってしまう。


「私に任せて……」


 ミーファがいきなりカプッて噛みついてバリバリって噛み砕いてしまった。


「ミーファ顎強いね! 歯は大丈夫なの?」

「一応噛む前に強化してあるの……それに歯は無いわ。あ、これ美味しいかも」


 ベジタリアンのミーファでも美味しいそうだ。


「1個半分に噛んで割ってくれるかな?」


 ミーファが何回か噛んで半分にしてくれたウニをちーちゃんと半分個にして食べてみた。


「「美味しい!」」


「ちーちゃん、これは中々美味しいね! 一杯獲っておこう!」


 【テトロドトキシン】を少量ずつ流し込んで20個ほどキープした。

 スキルを発動したら強力な毒を出せるが、こうやってスキルを使わず、直接少量ずつ流し込めばMPは使わなくて良いことが分かってからは、貝やこのような攻撃力のないものが相手の時には通常攻撃で対処している。



『♪ マスター、周囲にウニの魔獣がいます。そのウニの魔獣の方が、今食べているモノよりはるかに美味しいそうです。それと、もっとこまめにMAPを確認するようにしてください。使わないと宝の持ち腐れですよ』


 うっ、ナビーにダメだしされてしまった。

 確かに折角凄いスキルを持っていても、上手く活用しなければ宝の持ち腐れだ。


 この【周辺探索】のMAP機能、皆と共有できないかな?


『♪ 共有がお望みですか? 条件は有りますが、可能ですよ? マスターがリーダーの時で、マスターがMAPを出している時のみ同じ画面を目視上に表示できます。後はマスターのイメージ次第ですかね』


『やってみる!』


 皆の目視上に俺と同じミニMAPが右上辺りに表示されるようにイメージし、彼女たちもそれをクリックすることで拡大縮小して表示でき、ターゲットをクリックすればその情報が表示されるようにした。



「ちょっといいか? 俺のミニMAP機能を共有化した。今から出すので驚かないようにね」


 発動前に予告してから、ミニMAPを発動した。


「「凄い!」」


「これが八雲君の使ってた探索魔法なのね! クリックすればいいの?」

「うん。後、色で判別できるようにしてある。赤は危険な魔獣、黄色は危険の少ない魔獣、金色は転生者ね。一般の捕食者の大きな魚やウツボやサメなんかは黒で表示させるね。食材になるような対象は白にしようかな。で、今周りに赤い光点があるでしょ? クリックしてみて」


「「魔獣が周りにいるの!?」」


「『スティンガー・ウーチン』? なんか適当に英語をもじった感じがするんだけど、私の気のせいかな?」

「俺もそんな気がする……スティンガーか、でも名前で特性がバレバレだね?」


「え? どういうこと? 名前で何か分かるの?」

「ああ、そうか。英語がミーファの国ではなかったのかな?」


「会話の感じからして和製英語とかあったんじゃないかな? ミニマップとかイメージとかの言葉は通じてるんだし」


「成程……ちーちゃんは頭いいね。ミーファ、スティンガーって言うのは毒針って言葉なんだ。つまりは毒持ちね。それと、ウーチンはハリネズミだったかな? シーウーチンでウニの意味だったよね? 英語苦手だったからあまり自信がないけど」


「ええ、合ってるわよ。それとミサイルにスティンガーミサイルってのが有った気がするので、針とか飛ばしてくる気がするよね?」


「うん、スルスル! めっちゃ飛ばしてきそう!」

「なんか、2人の会話に付いて行けない……凄く疎外感が。クスン」


「「あ、ごめん」」


「で、あれ狩るのよね?」


「さっき食べたウニより遥かに美味しいそうだよ。魔物なので経験値も良くて屑魔石も手に入るって」

「「狩りましょう!」」




 ムラサキウニに似た、それをもっと毒々しい感じにしたウニの魔獣を狩ることにした。


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