第15話 敵との遭遇

 ある程度スキルについてナビーに教わった。


 皆、レベルアップ時にAPを得て所持しているが、それを自分で割り振って熟練度を上げることはできないそうだ。所持してるAPを自分で使えるのは、ユニークスキル【カスタマイズ】を持っている俺だけらしい。

 普通は地道にコツコツ修練して習得し、熟練度を上げる必要がある。


 俺もさっきのレベルアップで3ポイント持っている。その辺はMMOなどのゲームとよく似ているかな。


 弱い今は温存しないで使うべきだとナビーにアドバイスをもらったが、俺もそう思う。


 今現在、手持ちスキルで熟練度があるものは全てLv1しかない。


 Lv1→Lv2   AP1消費   1

 Lv2→Lv3   AP2消費   3

 Lv3→Lv4   AP3消費   6

 Lv4→Lv5   AP4消費   10

 Lv5→Lv6   AP5消費   15

 Lv6→Lv7   AP6消費   21

 Lv7→Lv8   AP7消費   28

 Lv8→Lv9   AP8消費   36

 Lv9→Lv10   AP9消費   45


 Lv1のものをLv10に一気に上げようと思うなら、最大でAPを45ポイント消費する計算になる。


 【カスタマイズ】ができるとはいえ、再度の割り振りは不可だそうだ。有用な分、AP利用は慎重にしないといけないな。ポイントを元に戻して再振りできないのなら、使わないスキルなどに無駄振りできない。


 各スキルのメリットを聞いて、手持ちのポイントを振ったのは3箇所だ。 


 【身体強化】Lv1→Lv2

 【麻痺毒】Lv1→Lv2

 【テトロドトキシン】Lv1→Lv2


 ナビー的には【身体強化】をLv3にするのも有りだと言っていたが、現状では毒の方がいいと思った。

 今でも十分威力を発揮するが、レベルが上がることによって出せる毒の量と威力が増すのだそうだ。

 今はレベルが低いので、上流の至近距離からでしか麻痺効果がないが、もっとレベルが上がれば下流からでも対流操作して、毒を流し込めるようになるらしい。



 あと、スキルは色々自己習得が可能なようだ。


 とりあえずスキル確認も終えたので、さっきからこっちをちらちら伺ってる可愛い母さんに報告してやろうと思う。


「母さんお待たせ」

「ねぇねぇ、どうだった? アリア様自ら送り出したヤクモちゃんなら、良いスキルくれたんじゃない?」


「そうですね。母さんと同じく【隠密】スキルがありました。あと、【忍足】【暗視】【身体強化】などがありました。探索系のスキルと鑑定魔法もありましたね」


「わぁ~~! 凄いよヤクモちゃん! そんなにあったらきっと強くなれるよ!」

「頑張って成体に成れれば強くなれそうですね。あ、それとスキルは習得可能なものも沢山あるそうですよ」


「ええ、誰もがすぐ得られるのが【気配察知】とかだね……皆、持ってるわよ」

「え? さっき母さん、そのスキルのことは言ってなかったような……」


「あ、そうか……【腕力強化】とか【忍足】なんかは比較的習得しやすいから、結構持っている人多いのよ。だから母さんも持ってるけど言わなかったの。チュートリアルが手に入ったら教えてくれるしね。【隠密】はどっちかというと習得が難しいタイプね。私たちはタコの特性で擬態できるから持ってる人も多いかもしれないけど、普通はなかなか得られないスキルよ」



 俺の鑑識ではステータスしか見えなかったので、口頭でスキルの詳細も聞いた。


  【チュチュチェ】

   HP:1648

   MP:843

  レベル:18

   種族:人族

  仮種族:ヒョウモンダコ

   性別:女

   年齢:20歳

 転生年齢:2歳8ヶ月

  職業:……


  攻撃力:870

  防御力:486

  敏捷力:225

   知力:834

  精神力:689

    運:……

  魅力 :1113


 《スキル》

  《生活魔法》

    【亜空間倉庫】Lv3

    【クリーン】


  《固有魔法》

    特殊支援系

     【墨吐き】Lv3


     戦闘攻撃支援系

     【麻痺毒】Lv4  

     【テトロドトキシン】Lv4


  《既存魔法》

    特殊支援系パッシブ

     【隠密】Lv4

     【忍足】Lv4

     【夜目】


    戦闘支援系パッシブ

     【腕力強化】Lv3

     【怪力】Lv3



 母さん凄く強そうだ。

 HPとか俺の10倍以上ある。生まれたての俺と比べる方がおかしいか。



 * * *



 チュートリアルを得てから5日が過ぎた。


 せっせと食事を運んだ甲斐があって、母さんも大分回復した。もうそろそろ母さんも普通に動けそうだ。


 【インベントリ】があるおかげで、大きな貝も狩れるようになったのが大きい。

 レベル0の頃は、小さな運べるサイズの獲物しか狩れなかったのが、大きな貝を狩っても亜空間に収納できるので、サイズは気にしなくて良くなったのだ。


 麻痺毒で弛緩させて、そっと近づいてカプッと毒を流せばどんな大きな貝も即死だった。


 この5日で俺の体長も3cmほどに成長している。まだまだ小さいが、母さんが言うには凄く早い成長らしい。

 食べられるだけ食べているからね。レベルも3になって少し余裕ができてきた。だが全く油断はできない。

 捕食者に遭ったら一巻の終わりなのは変わりないからだ。


 俺が今相手をしてるのは、あくまで餌の部類。相手は攻撃手段もなく、抵抗もできず食べられるだけの存在だ。


「じゃあ、母さん行ってくるね」

「ヤクモちゃん気をつけてね! 遠出しちゃダメよ」


 本当は【インベントリ】にトコブシや海藻類が数日食べられる分量保管してある。

 ナビーには狩りに出ないで、保管分が無くなるまでは成長を待った方が良いと言われたのだが、穴倉でじっとしてるだけなのが耐えられないのだ。


 母さんとの会話は楽しいのだが、5日も一緒に居るとネタもなくなる。



 * * *



 巣穴を出て、約15m離れた海草が生い茂っている場所にやってくる。


 ここは少し危険なエリアだ。餌となる海草があるので、エビや貝が一杯集まる場所なのだ。勿論そうなると、それを食する俺のような捕食者も集まるポイントとなる。



『♪ マスター! 至急お逃げください! 100m先に、天敵のウツボの幼魚がいます。30cmほどのまだ子供ですが、その子も転生者のようです。見つかると食べられちゃいます!』


『100m先か……大丈夫じゃないか?』

『♪ マスターは甘いです! 見つかって戦闘になったら、かなり勝率は低いのですよ? 逃げるが勝ちです!』


『分かった。じゃあ、このトコブシだけ獲ったら帰るよ』


 それがまずかった……トコブシを麻痺で動けなくして弛緩したところを岩から引っぺがしたのだが、その反動で岩がガコガコガコと大きな音を立てて崩れ落ちたたのだ。どうやら微妙なバランスで別の岩の上に乗っかっていたらしい。


『♪ マスター! 気付かれました! 急いでお逃げください! 凄い勢いで近付いて来ています!』


 俺的に超急いだのだが、7mほど進んだあたりでウツボに見つかった。


「お! でかい音がしたんで何かいるかと思って見に来たら、旨そうなタコじゃないか! ラッキー!」

「お前、俺を食うのは止めた方がいいぞ! 俺はヤバい毒持ちだ!」


 俺はそう言って、体表に鮮やかな青の紋様を浮かび上がらせて威嚇する!


 ヒョウモンダコ、漢字で書くと豹紋蛸と書く。

 この鮮やかな紋様の発色は、毒持ちだと分からせ威嚇する為のものとされている。


「ひゃほー! お前転生者か! 超ラッキー! 毒のあるタコなんていねーよ!」


 こいつの世界には、本当に居なかったのかも知れない。いや、馬鹿っぽいし知らないだけか?

 普通の生物は、こういう鮮やかな色をしたモノは、本能的に毒持ちだと認識して食べるのを避ける。まぁ、それ食べちゃって死んじゃった馬鹿がここに一人居るんだけどね……。


 お互いに転生者だったのが両者の不運だ。この馬鹿っぽい奴にはその本能が欠如していたのだ。


 危険を感じた俺は既に上流の方にゆっくり移動している。


 上流側に回り込んだ俺は【麻痺毒】を流し始める。



 勝てるか怪しいが、こいつは俺を見逃がしてくれそうにない。

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