第11話 レベルアップ
よし! 腹も減ってきた! 狩の時間だ! 今日もトコブシを食ってやる!
「ヤクモちゃん、無理しないでね! 危ないと思ったら、すぐ【墨吐き】で逃げるのよ!」
「うん。無理はしないよ。行ってくるね」
よくよく聞けば【墨吐き】には墨を少しでも被ると【ブラインド】効果が発生し、相手を盲目状態にできるそうなのだ。このスキルもかなり有用だね。
巣穴からでて、意気揚々と昨日のトコブシが沢山居た岩場のほうに向かおうとすると、20匹ほどの小エビが海草の陰に隠れて群れているのを発見する。体長が2cmぐらいあり、俺より少し大きい。下手したらこっちが食われそうだ。
でも美味そうだ……群れて密集しているし、上手くやれば【麻痺毒】で一網打尽にできるかもしれない。
よし、決行だ! 巣穴から10mも離れていないし狩らない手はない。
俺は見つからないように上流にそっと回りこみ、【麻痺毒】を発動してエビの群れている所に流し込んだ。
小さなエビには効果抜群だった。やっぱこの毒スゲ~!
17匹のエビが動けなくなっている。
早速1匹食べてみる。
バリバリ……むしゃむしゃ……うめ~! プリプリで美味しい!
俺のサイズ的に1匹分も食えなかった。
よし! 母さんにお持ち帰りだ!
吸盤に4匹くっつけて、自分より大きなエビをなんとか引き摺って持ち帰る。
「母さん! すぐそこで、エビが群れていて運よく狩れたよ!」
「えっ!? さっき出たばかりなのに、もう狩って来たの?」
「うん! なんて名か知らないけど美味しいエビだよ!」
「ちょっと待ってね……あっ、これ、エビじゃなくてアミって表記されてるわね」
「え? アミ?」
アミって釣りの餌で良く使ってたやつ? アミはエビに似てるが、プランクトンの一種だ。普通なら17匹とかではなく数万とか数億の群れをつくって浮遊しているものだ。クジラとかがバクってやってる映像をテレビで良く見るけど、あれがそうだね。
それより気になったのは、母さんは鑑定魔法を持っているのかな?
「母さんは鑑定魔法があるの?」
「うん? 違うよ。レベルが1になったら、皆、手に入るんだけど、チュートリアルが神様から貰えるの。それがいろいろ教えてくれるのよ。それより、このアミ、食べて良い?」
美味しそうなものを前に、チュートリアルの説明どころではないようだ。
勝手に食べないで、食べたそうにしている母さんがやたらと可愛い……見た目はタコなのに……。
「うん。全部母さんの分だよ。まだ10匹以上置いたままにしてあるから、全部取ってくるね」
「そんなにあるの! じゃあ、遠慮なく頂くね!」
一杯有ると知った母さんは、早速噛り付いた。
「うっ~~! 美味しい! ヤクモちゃん美味しいよ~♪」
母さんは小さなアミを頭からポリポリ食べている。タコの食事とかグロそうなのに、なんか可愛い……。
俺は4往復して全部のアミを回収してきた。
「ヤクモちゃん、今、このアミたちは麻痺毒で痺れて動けないだけだから、止めを刺しなさい。そうしないと狩った事にならないので、経験値が貰えないのよ」
「そうなんだ。これだけ狩ってもレベルが上がらないから、結構レベル上げって大変だと思ってたんだけど、止めを刺したらレベル上がるかな?」
「う~ん、どうかな? 本当に最弱の餌の部類だし、あまり期待しない方がいいかも。母さんも、2ヶ月ほど幼生体で浮遊生活を過ごしたけど、その間にアミは一杯食べたけど、レベル3がやっとだったしね」
「そっか、攻撃力のないプランクトンだもんね。狩りというより、食事って感じなんだね」
母さんの指示に従って、スキルは発動しないで一噛みずつ少量の毒を流して命を奪った。
「どう? レベルは上がった?」
「やっぱ母さんの言うとおり、レベルは上がらなかったよ」
「アミよりトコブシの方が経験値は多いはずよ。やはり危険を伴う狩りの方が得られる経験値は多いからね」
「なるほど、俺ちょっと海草が食べたいから、なんか採ってくるよ。母さんは無理しない程度に、食べられるだけ食べといてね」
「ヤクモちゃんありがとうね。優しい良い子を授けてくれたアリア様に感謝だわ♪」
チュチュチェ母さんは、種族年齢は2歳半だそうだ。なので、実年齢は20歳になるとのこと。
18歳で海で溺れて亡くなって、転生してこの世界で2年半。足して20歳か……。
不思議だな……生前の記憶がお互いにあるのに、俺たちにはちゃんと親子関係が成立している。
親として、子としての感情があるのだ。家族愛というやつかな?
親より先に死んでしまい、親不孝をしたなと思ってる本来の自分の母親となんら変わらないくらいの情がちゃんと今の俺にある。
タコは群れる生態ではないので、近い将来チュチュチェ母さんともお別れになるのかな? でも、それまでは大事にしようと思う。なんかこの人、可愛いしね。
海草を3種類ほど採取して、帰路の途中にトコブシの子供を2匹狩る。
2匹目を狩って命を奪った瞬間、脳内にシステム的なアナウンスが流れた。
『レベルが上がり、チュートリアルが利用できます。ご利用なさいますか?』
「勿論利用する! 待ちかねていた!」
即答でチュートリアルを手に入れることにした。
脳内アナウンスって……まるっきりラノベの世界だな。
さて、どんなモノなのかな? 凄く楽しみで興味がある。
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