第12話 チュートリアル

 待ちかねていたレベルがやっと上がった。

 レベルアップと同時に、脳内に直接聞こえるようなシステム音声的な声が掛けられた。


 母さんが言っていたチュートリアルという神の恩恵だ。これがあると、色々と教えてくれるそうだ。


「早速聞きたいことがあるんだけど?」

『直接声を出さなくても、頭で思うだけで伝わります。ですが、初期設定が終わっていないので、先に設定を行う必要があります。今ここで初期設定を行いますか?』


 う~ん、ここはフィールド、しかも今現在外出して狩りの最中だ。

 獲物も持ってるので、捕食者に見つかる危険もある。巣穴に帰ってからの方が良いだろう。


『巣穴に帰ってからでもそれは可能なのかな?』

『はい。ですが、初期設定を行うまでチュートリアルのサポートは受けられません』


『分かった。じゃあ、巣穴に帰ってからにするね』

『了解しました』



 海草を頭に乗っけて、小さなトコブシを2個吸盤にくっつけて帰宅する。


「ただいま母さん」

「おかえりヤクモちゃん! お母さん、あなたが外に行く度に心配でドキドキするわ」


「でも、外に出て狩をしないことには飢えてしまいます。レベルも上がらないですしね」

「それは分かっているのだけど……」


「それより母さん! さっきトコブシを狩ったらレベルが上がりました!」

「まぁ! おめでとうヤクモちゃん! 随分早く上がったわね。積極的に狩ってるものね。ごめんね、私のために……」


「なに言ってるんです。母さんのおかげで、先に基礎知識を得ることができ、こうやってサクサク狩りもできるんじゃないですか」


「うん。そう言ってくれると嬉しいわ」

「それより、チュートリアルの初期設定をしなきゃいけないのですが。初期設定って何ですか? 何かした方がいいようなアドバイスとかはありますか?」


「う~ん。町で聞いた話なんだけど、人によってこのチュートリアルって各々性能が違うそうなの。その違いが出るのが最初の初期設定だって皆が言ってたわ。なんか、設定する時のイメージが大事なんだって」


「イメージですか?」

「ええ、そう言っていたわ。ごめんなさい、母さんあまりこういうの詳しくないの。父さんだったら詳しく知ってたのにな……」


 父さんのことを思い出しているのか、悲しそうな顔になった。

 イメージが大事か……正直どういうものなのかやってみないことには判断できない。


「ちょっと今から初期設定をしますので、隅のほうに行きますね。集中した方が良いのでしょう?」

「ええ、そうだわね。私はできるだけ静かにしているから、集中してイメージすると良いわ」


「ちなみに、母さんはどういうイメージなのですか?」

「私が困った時や質問した時は、色々教えてくれるようにと思ったわ」


 なんだかアバウトすぎてよく分からん……。




 穴倉はそれほど広くはないのだが、何せ俺はまだ1cmちょっとしかない。

 さっき狩ってきたトコブシを食べたそうにしている母さんに渡してあげ、隅に行ってチュートリアルを呼び出す。



『チュートリアルさん、今から初期設定をしてもらって良いですか?』

『了承しました。では、只今よりチュートリアルの初期設定を行います。ですが、先に確認いたします。チュートリアルのサポートを「受ける」と選択すると、それ以降に得る経験値が若干下がります。それでもサポートを受けられますか?』


『え? 貰える経験値が少なくなるの? なんで?』

『チュートリアルとは、本来初心者向けの個別指導を行うシステムです』


『意味自体は知っている。個別指導とか家庭教師って意味だろ?』


 MMOとかのインターネットゲームではよくある機能だ。


『そうですね。分かり易く言うと、チュートリアルを受けるということは、あなたの世界でいうイージーモード設定になるようなものです。なので、なんの指導も受けないノーマル状態より、若干経験値を少なくさせていただいています』


 成程ね……RPGとかでイージーモード設定があるようなやつは、『易しい』に設定するとクエストの発生場所や次のクエストまでの場所に『誘導線』とかがでて教えてくれたりするのだ。

 易しくなる分、経験値を減らされるのか……俺的には無くてもいけそうだよな。MMOとかRPGなんか大好きだ。ダンジョンのマッピングとかも結構得意だったりもする。


 でも、直感だが、チュートリアルはあったほうが良さそうな気がする。

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