第10話 周辺情報
昼は危険な捕食者が居るので、タコ種は穴倉でじっとしているのが基本だそうだ。
日が沈む前に、母さんから敵になりそうなヤツの周辺情報をもらうとしよう。
「チャチャチャ母さん、この周辺で危険な敵っていますか?」
「チュチュチェね。もうそのフリはいいわ……わざとでしょ? 面白くもなんともないから普通に呼んでね」
「ウッ……分かりました母さん。周辺の魔物の話が聞きたいです」
「魔物ね……魔獣とも言われていて、いろいろなのが居るそうよ。この周辺にはあまり居ないわ。この辺は初心者フィールドって言われていて、転生者も魔獣も低レベルしか居ないのよ。産卵フィールド・赤ちゃんフィールドとも言われているエリアね」
「成程……生まれてすぐにいきなり最強種とかち合って即死とかはないようにされているのですね」
「でも今のヤクモちゃんは、殆どの生物に遭遇した瞬間に食べられちゃうわよ……気を付けてね」
「ですね。サイズ的に一口ですよね」
「転生者は魂石を所持しているので、そこはかとなくオーラを纏っているの。見つかったら必ず狙ってくるわ」
魂石がある転生者は、オーラが出ているんだ……マジで気を付けないとだね。
「暫くはコソコソ隠れて貝類を狙います」
「それが良いわ。この辺の魔物は頭部に1本角を生やした一角魚がいるわね。あと、クラゲのようなスライムって魔獣もいるわ……液体っぽいのに海に溶けて消えないウネウネした変な生き物なの」
スライムってあのスライムかな?
「スライムは体が半透明で魔石が透けて見えるから、私たちタコ種は触腕を刺し入れて魔石を抜くと即死させる事ができるの。タコ種にとっては、あいつらは狩りやすいわよ。見つけたらラッキーって感じで狩ってるわ」
やっぱ、ゲームやラノベで必ず出てくる、あのスライムみたいだね。でも、母さん間違ってるよ―――
「母さん、触腕はイカが持つ長い2本の腕のことですよね? タコに触腕はないです……8本の触手です。イカは8本の触手に、2本の触腕があるから強いのです。俺もどうせならイカが良かったな。クラーケンとか居るなら強そう」
「クラーケンとか魔物じゃない! しかも最強種! 悪魔の使いとか言われてる奴よ! ヤクモちゃん博識で頭良いのね……」
クラーケン居るんだ……流石日本のラノベやアニメがベースな世界だ。
なんか、母さんの『ヤクモちゃん』呼びが定着しつつある……まぁ、いいけどね。
「う~ん……後は何が居るかな……そうそう、ミミックシェルって貝の魔物が居るけど、狩れたら何かお宝を得られるかもしれないわ。宝箱のような2枚貝なんだけど、普通の貝に擬態していて、近寄ると射程に入った瞬間に正体を現してパックンチョしてくるので注意がいるわ。宝箱型の貝殻の中に、自分が狩った魔石や魂石を溜め込む習性があるので、レベルの高いミミックシェルほど、中のお宝に期待が高まるのよ」
「へ~、見つけたら狩りたいですね」
「あいつら、どうして狩った魂石食べないんだろうね? 綺麗な色したレアな魂石や魔石ほど食べずに大事に保管したがるそうよ」
「本当に自分のことを宝箱と思っているのかもしれないですね。レアな物ほど、食べたい衝動より大事に保管したい衝動に駆られるんでしょう。母さんはミミックシェルは狩ったことあるのですか?」
「ええ、父さんと2回狩ったけど、魔石が幾つか入っていただけだったわ。結構強いから、ヤクモちゃんが見つけても、今は絶対相手をしたらダメよ」
「そんな無謀なことはしませんよ。母さんぐらい大きくなってからの話です」
それからも母さんから色々な話が聞けた。この周囲は比較的安全だそうだが、少し行けばウニやヒトデなんかの魔獣もいるそうだ。成長して大きくなったら、そういう動きの鈍い魔獣を狙うと良いそうだ。
さて、もうすぐ日が暮れて、俺たち夜行種の狩の時間だ。
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