第7話 個人スキル
母さんに有用な情報を沢山教えてもらっている。知ってると知らないのでは、生存率がかなり変わってきそうだ。
「あ、それとこの手なのですが? 町で人族の姿に戻った時、動かすのに違和感とか齟齬が出ないのですか?」
「ああ、それも大丈夫ね。何故だか今も沢山あるのに普通に動かせているでしょ? 人の姿に戻っても、以前の感覚で動けるわよ」
「母さん、スキルのことをもっと詳しく知りたいです」
「自分の所持スキルについては、本当は誰にも言っちゃいけないのよ? 弱肉強食の世界なんだから、言うと弱点を晒すってことと同義なの。対策をされてしまうとなす術もなく食べられちゃうからね。でも可愛い我が子なら教えちゃうわ」
「良いのですか?」
「ええ、勿論よ! まず種族固有スキルね。これはあなたもレベル1になったら使えるようになるはずよ。種族として生まれた時から備わるスキルね」
「あ! 幾つか予想できます!」
「え? そうなの? 言ってみて?」
「この種族は、おそらくヒョウモンダコって種族で、多分スキルに【毒】が使えるんじゃないですか? 後、【墨】とかかな?」
「凄い! 正解よ! レベル1になる前に予想できるなんて、流石はアリア様自ら送り出された方だわ! ヤクモちゃん素敵よ♪」
ちゃん呼びは余計だが、名前で呼ばれたことがなんだか嬉しかった。
この世界で俺を知る者が居ないからだろうか……そう思うと急に寂しくなってきた。
「母さんって、7つ魂石をGETしてるってことはそこそこ強いのです?」
「天敵が何種類かいるけど、この周囲での強さ的には中の上ってとこかしら。上手く立ち回れば試練をクリアできる種だと言われているわよ。毒スキルも2種類所持しているわ。【麻痺毒】と【テトロドトキシン】っていうスキルで、どっちも即効性があって結構凄いのよ」
【テトロドトキシン】ってスキル名なの? それ毒の成分だよ?
神様がスキル名を付けたのだろうけど、こっちの世界の人が知らないだろうと思って……アリア様、その辺は適当なんだね。
「スキルはどうやって使うのです?」
「基本私たちは夜行性なの。そっと近寄って、潮の上流から【麻痺毒】を流すの。そして麻痺させたうえで、気付く間もなくカプってひと噛みして【テトロドトキシン】スキルを発動したら即死よ」
「暗殺系のスキルなんですね」
「そうね。もう1つある【墨吐き】は戦闘時の目くらましと、逃走時に使うの」
「成程。ありがとう母さん。役に立ちそうだね」
「今教えた3つは種族固有スキルね。同族なら全員所持しているはずよ。そして個人が持つ個人スキル。ユニークスキルとか言われるレアなものもあるそうよ。他の人に秘密にするのはこの個人スキルの方ね。私の個人スキルは3つ、【隠密】【怪力】【忍足】ね。【怪力】の方は成りが小さいからそれほど役に立ってないかもだけど、【隠密】と【忍足】は私の種族特性と凄く相性が良くて、サクッと狩ができるのよ」
「ああ、解ります。凄く相性が良さそうですね。俺のはレベル1に成らないと分からないんですね?」
「ええ、個人スキルは全くない人も居れば、最初から沢山持って生まれてくる者も居るので何とも言えないわ。あとは普通に生活していれば勝手に習得できるものも結構あるわね。町で買うこともできるので、なくてもそう悲観しなくてもいいからね」
「スキルを買えるのですか!?」
「買えるけど、対価は『魂石』か『魔石』なの。捕食してレベルアップ時に得られる可能性のほうが高いから迷いどころね。レアスキルほど高額だから、魂石や魔石が何個もいるの。でも、【隠密】や【忍足】【気配察知】は種属的に自分で習得できるから心配いらないわ」
「相性のいい【隠密】とかなら購入も考えても良いかなって感じですね」
「そうね。魂石食べても、殆どスキルは得られないけど、普通の狩りで得られる経験値よりずっと多いのでレベル上げには魂石と魔石は欠かせないからね。魂石や魔石にはその捕食した者の経験値が詰まっているんだって言われてるぐらいだし。最終的に人族目指すなら、レベル50ほどの人が集まる街に行って、そういう人たちと戦って捕食しないといけないのよ……」
町も幾つも在って、レベルが足らないと町に入れないのか。逆に多すぎても入れない。高位の者がいつまでも居座れないための対策ってところかな。
レベル5~レベル10の間に魂石が捕食できなければ、町に入れず、次のレベル10から入れる町を目指さないといけないんだな。
「母さん少し疲れたわ……ちょっと休ませてもらうね」
「あ、気付かずにごめん母さん!」
やはりかなり弱っているようだ。
生まれたばかりで表皮がやわやわだったが、母さんと話してる間に少し張りがでて硬くなってきた。
母さんが寝てる間に、食べるものを採ってこよう。
母さんを死なせたりなんかしない!
俺はそっと巣穴から出るのであった。
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