第6話 種族本能
母さんは食料さえあれば助けられる。
なら助けないとね。
普通のタコならそのまま死ぬそうだが、転生者は残っている寿命分は生きられるとのこと。
残念ながら父さんは精嚢を母さんに刺しいれた時点で残りの命はないとのことだ。正に命の交換だね。でも、父さんはそれを望んだそうだ。父さんはもう死んじゃったのだろうか? 一度会ってみたかったな。
2人は町に入った時は夫婦として過ごしたみたいだ。
「2人は人としてのSEXだけじゃ駄目だったの?」
「この世界では生物としての本能が強く出ちゃうのよね。理想の相手に巡り会うと、そのお相手の子供が欲しくなっちゃうの。そうなると、最終的に試練を全てクリアして人に戻るか、その種のまま子供を残すかしかないのよ。本当は最終試練まで辿り着いて、人として地上世界で子供を残すのが理想なのでしょうね」
「成程……普通は町の中でお相手を探すの?」
「そうよ。私たちは偶々この広い海の中で出会えたの♪ だから、人として町で逢瀬を重ねても一時的な快楽しか得られなくて満足できなかったの。どうしても子供を残したくて、フィールドでこの種族として子供を作ったの。こんな話……恥ずかしいのよ?」
「ああ、うん。でも母さんや父さんのことや、この世界のことをもっと教えてほしい」
「そうね、厳しい世界だしね……『魂石』の捕食とか最初は戸惑うと思うわ」
「人の魂なんだよね?」
「どうなんだろう? 本当に魂ってあるの? そう呼ばれているだけでその辺のことはよく分からないわ」
「じゃあ、俺はとりあえず生きるために食料を探さないといけないんだね?」
「そうね。そしてできれば強くなって魂石を捕食すること。魂石にはスキルが刻まれていて、食べると何か得られることもあるそうよ」
「その言い方だと、母さんはスキルを得たことがないんだね?」
「うん。残念ながら私は自分の生まれ持った最初の初期スキルしか持ってないわ。魂石を7つ食べているけど、今のところ何も得られなかった……」
母さん、7人も食べたんだ……。
「あなた……今、こいつ一杯人食ってるんだとか思ったでしょ……。でも、捕食は必要条件なの。必須条件と言い換えてもいいわ。向こうも狙ってくるから注意が要るのよ。特に町の入り口周辺はビギナー狙いのハンターが一杯居るから注意ね」
他にも幾つか気になることがある。
「町で人の姿で知り合って友人になったとして、フィールドで種族の姿で出会って相手のことちゃんと分かるの? 見分けがつかないで、友人を食べちゃったとか笑えないよ?」
「あー、それは大丈夫よ。あなたは今、種族レベルが0の状態だけど、レベル1になるとステータス画面っていうものが目視上に出せるようになるわ。目視上というか見えている視界の中に浮遊というか……ごめんなさい、上手く言えないわ」
MMO好きな俺には、さっき母さんの言ったことだけで何となく理解できた。異世界にTVゲームがあるかは知らないが、ない世界の方が多いだろうと思う。母さんの世界にはそういう物がないから説明ができないのだ。だが、俺なら一言で理解できる。日本の高校生なら『MMOのようなステータス画面』って言えば、大抵の者はイメージできるだろう。
「そのステータス画面に何か判別できるような表示とかがされるのかな?」
「ええ、そうよ。町で知りあった者は、名乗りあえば顔写真付きで自動に登録できるわ。フィールドで登録済みの者に出会うと、人族姿の顔写真が画面右上に名前とともに表示されるから友人だって判別できるわ。でも、要注意よ。特に酒場や役場で馴れ馴れしく声を掛けてくるような奴は、フレンド登録しておいて油断させ、フィールドで襲ってくるから気を付けてね。フィールドで実際会ったら、サメだったとかいうのもあったそうよ」
サメって……イメージ的にも悪そうだ。
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