第5話 魂石
チュチュチェ母さんから色々話を聞いていると、どうもこの世界は同じ生物でも3種に分かれるようだ。
『転生者』と『普通の生物』、そして『魔物』だ。
普通の生物の中には人族も含まれるようで、転生者以外にもこの世界の人が居るらしい。
転生者と生物と魔物の違いはいくつかある。
・転生者には生前の記憶が残っていて、高い知能を有する事。
・体内に元人族の証とされる『魂石』を有する事。
・魔物は凶暴で基本知性が低く、体内に魔物の証とされる『魔石』を有する事。
・転生した生物の寿命特性に反し、人族であった頃の残りの寿命が反映される事。
ん? という事は……。
「ねぇ、チョチィネェ母さん。さっきの話だと、母さんには寿命がまだ残っているのではないのですか? 残りの寿命が残っていないほど高齢って訳じゃないんですよね? 18歳で死んだって言ってたし、母さんは何歳なんですか?」
「そうだけど、私、もう動ける体力が残ってないの。それと、チュチュチェね」
どうも転生者の俺の父さんにあたる人は、種族特性によって精嚢を母さんに刺し込んだ後は死亡から逃れられないみたいだ。でも転生者でメスの母さんは弱り切って動けないだけで、食料さえなんとかできればまだ生きられるのではないだろうか?
ならば俺のやる事は決まっている。
「母さん、俺が何か食べるモノを獲ってくるよ」
「待ちなさい。誕生してすぐが1番危険なの。1レベル上げるのがこの世界の最初の課題なのです。1レベル上がればチュートリアルが呼び出せるようになり、今後の指針が決め易くなります」
レベルを上げる方法は狩り……捕食する事によってレベルが上がるみたいだ。
俺は運よくチュートリアルを手に入れる前に、母さんからいろいろ教わることができた。これはラッキーなことだと思う。
殆どの魚類は卵を岩場の陰や海藻の根元などに産み付けるだけだ。他の種族への転生だったら、誕生した場所に親はなく、こうやって親から情報を得ることができなかっただろう。
母さんからの情報で1番驚いたのが、俺たち転生者の最終目的は元の姿を取り戻すことらしい。
『ん?』っと思ったのだが、このタコの姿は仮初の姿らしい。
ここから少し離れた場所に神の祝福で守られた町があり、そこでは転生者が一時的に元の姿に戻れるそうなのだ。元の姿というのは転生前の姿……16歳の俺に町の中では戻れるのだそうだ。
但しそこの町に入るには条件が要るのだとか。
その条件とは
・種族レベルが5以上必要
・『魂石』を1個以上捕食している事
・種族レベルが10以下な事
・町に入るために、入門料として3千ジェニーか屑魔石が3個必要な事
町の名前は『初心者の町』。転生して間もない者たちが集まる場所だそうだ。
この情報はレベルを1上げた時にチュートリアルが教えてくれるので、以降は皆、町を目指す事になる。
「俺の父さんと母さんは元の姿に戻るという試練を諦めて、子を残す事を選んだの?」
「そうなの。同種同士での転生者が出会う事が珍しいんだけど、あの人と出会っちゃったの♪ もう本能に抗えなかったわ。彼もたった1回の逢瀬で死ぬのを分かっていて、私を愛してくれたのよ♡」
「町の中で、人の姿では子供はできないの?」
「それが最終的な転生者の本懐なんだと思う。完全に人の姿を取り戻すには、いくつかの試練をクリアしないとダメなの。『初心者の町』では条件は3つね。種族レベルを5以上にあげて、他の転生者の魂石を1個以上捕食する事。町に入る通行料として屑魔石が3個要るわ」
「人の魂を食べるの!?」
衝撃的な条件だった……アリア様はなんでこんな世界に俺を送り込んだんだよ!
そう思ったのだけど、運命ルーレットを回してこの世界に決定したのは俺だということを思い出した。
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