第3話 女神アリア

 目の前の可愛い彼女が色々説明してくれているのだが、彼女は何者なんだろう?


「ところで、あなたは女神様とかですか?」

「そういえば、まだ名乗っていなかったですね。私は運命を司る、運命神のアリアと申します。100の世界を管理していて、100の世界の主神でもあります。今回、あなたをここに呼んだのは、あなたの世界の主神がちょっとあなたが可哀想なので、そっちで面倒を見てやってほしいとお願いしてきたからです」


「面倒を見る? どういうことでしょう?」

「面倒をみるといっても、生活の面倒とかではなく、転生に関する事です」


「転生というと、生まれ変わりですか?」

「はい。あなたの居た世界は、私の管理する世界より3つほど上位の世界にあたります。なので、その世界からこちらに来た場合、いわゆるチートっぽいことが可能になります」


「う~ん。でもそれって降格人事ですよね? 3階級の降格?」

「あはは、まぁ、考え方次第でそうなりますが、あなたにとっては降格というより、上位の存在のまま下位の世界に行けるので、チーターとかいわれる存在になれますよ? 勇者召喚とか、あなたの世界のラノベやゲームなんかでよく使われる設定ですよね?」


「勇者とか嫌ですよ! そんなの、その世界の国の偉い人に良いように利用されるのがオチじゃないですか?」

「いえいえ、特に何かをやらせたりとかはないですよ。どのような世界に行きたいとか希望はありますか?」


 まだ行くって返事していないのに、女神様、俺が行くの前提で話しちゃってるよ。


「転生するの確定なのですか?……転生後の自我は残っているのかとか、記憶は初期化されるのかとか、その辺はどうなっています?」


「あなたの場合は上位者的存在なので、こちらの世界ではある程度どのようにでもできます。行く世界にもよりますが、私の管理している100の世界から選んでもらいます。どの世界も私の管理する世界は、日本のラノベやゲームなどの世界観がベースになっていますので、日本人のあなたには馴染みやすいのではないでしょうか?」



 女神の話を聞き、少し悩んだのだが、自分なりに結論を出した。


「ごめんなさい。折角のお誘いですが、俺はこのまま死を受け入れます」

「えっ!? 何故ですの? 普通はチート転生とか喜ぶのではないですか?」


「生きるのって結構大変じゃないですか? 特に前世に不満もないですし、もうこのまま安らかに永眠したいです……」


「成程……地球の管理神が、私に委ねる理由が何となく解りました。随分可哀想な思考の持ち主なのですね。地球の神との賭けは別として、救済を依頼するはずです」


 賭けってなんだろう?


「賭け? 俺って、そんなに可哀想ですか?」


「生命の生きる目的の1つに、種の継続というものが本能的にあります。子供を作り、次世に繋ぐことが動物も植物も、全ての生あるものに定められています。あなたはそれを成さずして死んでしまいました。生き物として大事な後継作りが成されていないのです。所謂童貞君ですね。女性を知らずして亡くなるとか、とても可哀想です」


 なんて酷いことを言う女神様なんだ! 全国の童貞君に謝れ!


「うっ~……で、でもそんな人は一杯いるでしょ? それとも童貞や処女で子供が居ないまま死んだ人は、皆、可哀想とかで転生しているのですか?」


「いえ……あなただけですが。まぁ、童貞君だから可哀想というのは冗談です。思考がちょっと可哀想ではありますけどね……。地球の神は、あなたに何か思う事があるのでしょう。試練的なものと思って下さい。私の管理する世界は、全て日本のラノベやゲームなどが参考になっているそうです。剣や魔法、エルフやドワーフ、猫耳娘や犬耳娘も居ますよ」


「神の試練ですか……でも、魔法は魅力的ですね」


「そうでしょ!……と言うより、ぶっちゃけちゃいますと、私より上位の世界の管理神に頼まれたので、あなたに転生を拒否されたら私が困っちゃいます」


 あらら……マジでぶっちゃけちゃいましたね。


「俺が拒否すると、女神様が怒られたりとかするのですか?」

「怒られたりはしないでしょうけど、評価が下がったりとか、私が何かお願いしたい時に知らん顔されたりとかするかもですね……」


 なんだかな~……評価が下がるとか、神様も世知辛いですね。

 あまり乗り気じゃないけど、魔法とかには興味はある。女神様のお願いだし、聞かないのはまずいような気もする。今回パスしたせいで、次の転生がゴキブリとかにされたら嫌だしね。機嫌を損なわないよう、二度目の人生をおくってみようかな。


「お願いを聞いてくれないからと、そのようなことはしませんよ」


 あらら、考え読まれちゃった……でもやっぱ輪廻転生とかあるんだね。


「じゃあ、どこの世界に行くか女神様が良いと思うところに決めてください」

「行ってくれるのですね! ありがとう! 私は運命神と言われています。ユニークスキル【運命のルーレット】を所持していますので、それであなたの行先を決めても良いですか? 自分の運で良い条件を掴みとってください」


「良く分かりませんが、運命を決めるルーレットなんでしょ? なら、それでいいですよ」


 俺は女神のスキルというルーレットを何回か回したのだけど、時々女神様から『あちゃ~』とか、『あぅっ!』って声が聞こえてたんだよね……嫌な感じしかしない。


 そして、最後には視線を合わせてくれなくなったんですよ……。


 今思うと、俺は行先を自分で決めるべきだった……後悔先に立たずだ。


「あなたは、運がかなり悪いようですね。あの海域で殆ど居ないヒョウモンダコを釣って、しかもその毒で死ぬくらいなのですから、もっと早く気付くべきでした。う~む……仕方ないですね。運のパラメーターと、私の加護を幾つか付けてあげますので、頑張って伸し上がってくださいね。記憶もそのまま残しておきますので役立ててください」


 今の記憶があるのは良いな。


「俺が行く世界はどのような世界観なのでしょう? よくある中世ヨーロッパ風の世界みたいなのだと嬉しいですけど」

「え~と、行けば分かります……」


 またプイッてそっぽを向かれた……仕草は凄く可愛いのですが、それされると凄く不安になるのですが!


「行けば分かるとか、それはそうでしょうけど……」

「と・に・か・く! 最初はレベルを一つ上げるのを頑張ってください! そうすればチュートリアルがアシストしてくれるようになるので、それのガイドに従えば何とかなるはずです! では行ってらっしゃい! 良き今世を!」


 ピカッと部屋というか意識の中が眩く光ったかと思うと、気付いたら卵の中。

 こんな感じで、女神アリアに少し強引に送り出され、今に至る訳だけど……。 


 やっぱりタコはないだろ!


 女神アリアに色々抗議したいが、反応なしだ。


 やっぱ失敗したな……俺どうなるんだろ?

 タコに転生とか……凄く不安だ。

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