第7話
「――好きだったんだ。優樹のことが」
ぼくは静かに言ったつもりだけど、心臓がバクバクと落ち着かない。
「え……」
ぼくは優樹の表情を見れなくなった。
顔が熱くなるのを感じている。
時間がとても遅くなったような気がした。
気まずくなって、なかなか話しかけられずに、沈黙が辺りを包み込んでいた。
沈黙を破ったのは、向こうからだ。
「――雄樹。あのさ、それって……女子として?」
その声は涙声になって、震えていたんだ。
「違う! いつもの優樹がいいんだ。いまのままで」
ふと顔をあげて、叫んだ。
そのまま優樹を見て、びっくりしてしまった。
目に涙を溜めて、ぼくを見つめていた。
「雄樹……ぼく……ずっと、雄樹のことが好きだった」
優樹の一人称が『ぼく』に変わっているに気がつき、思わずドキッと心臓が大きく波打つ。
ポロポロと涙が頬を伝っていくけど、それを拭いながら再び話し始めた。
「でも……ぼくのことを雄樹が、女として好きなのか……ずっと悩んでて。でも、さっきの『いつもの優樹がいい』って、言ってくれたから、安心した」
優樹は悩んでいたことを話し終わってから、少しずつ落ち着いてきたみたいだ。
「うん、返事は……OKってこと?」
戸惑いながら聞いてみる。
「そうだよ?」
優樹はいたずらっ子のような表情で話した。
ぼくはとても嬉しくなった。
声にならない叫びを少し堪えて、ガッツポーズをした。
「よっしゃあ~!!」
大きな声で叫んでしまって、ぼくはハッとしてしまったんだ。
優樹はそれを見て、泣き笑いの表情になっていた。
「あ、雄樹。ついぼくって言っちゃったけど、これが本来の自分だから。これからもよろしくね」
「え? わかった。こちらこそ、よろしくお願いします!」
握手をした。
とても幸せな気持ちになれた。
今日は帰ることにした。
帰りの電車でぼくはファッションショーの話を聞いた。
「優樹のクラス、めちゃくちゃクオリティーの高かったよ?」
「ありがとう」
あれはほとんどが手作りしていて、サイズも統一して作ったらしい。
ポリス風の衣装とメイドは買ってきたものを改造して、男装の衣装はほとんど家からと買ってきたものを使ったみたいだ。
「それでも、あのクオリティはすごいよ」
「ありがとう、クラスでも結構終わったあと、盛り上がってたしね」
そして、優樹の最寄り駅に着いた。
「雄樹、また明日の朝、会おう」
「いつもの時間? 文化祭前のでいい?」
「うん」
明日は片付けとクラスで打ち上げをやるらしい。
火曜は振り替え休日だと教えてくれた。
ぼくたちは少しだけ会話をして、ホームに降りた優樹が手を振っていた。
家に帰って、すぐに部屋に入った。
はしゃいだけど、それ以上になんか疲れていたんだよね。
「はぁ……、疲れたな」
少し長かった一日がようやく終わった。
それと同時に、優樹との関係は変わった気がする。
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