第6話
ぼくと飯沼は高等科のお化け屋敷のあるクラスを全部回ったし、よく飯沼も叫びまくりながらついてきてくれたと思う。
「大丈夫か……? 雄樹、もう耐えられねぇよ……お前の絶叫系好きには」
そう言っている飯沼は半泣き状態で、だいぶ疲れているようだ。
「飯沼。これ、どうぞ……お化け屋敷についてきてくれたお礼だよ」
模擬店の人気だったトッポギを買ってきた。
食べ物もほぼ制覇している。
あとは体育館のダンス部を見てから、再び二年六組に行くことにしたんだ。
「優樹のクラス、めちゃくちゃ人がいる。やっぱ、口コミで広がってるだろ」
ぼくと飯沼は再びクラスへと向かう。
やっぱり優樹はとても似合っていて、ぼくは再び圧倒されてしまった。
その姿が本来の姿だと思った。
「優樹はすごいな~。いつもより良いよね」
文化祭が終わり、ぼくは聖凜学院近くにある本屋にいた。
優樹と待ち合わせて一緒に帰ることにしたんだ。
飯沼は先に帰っている。
「優樹によろしくな! 俺は塾に行くよ」
そう言って、ぼくは一人でここで待つことになった。
小説をあちこち読んだり、ちゃんと伝えたいことを整理していたりで……時間が経つのは早かった。
「雄樹、お待たせ~」
いつものダークグレーのブレザーにスラックス。
さっきのファッションショーのような表情になっている。
「お疲れ~、すごかったよ? ファッションショー、似合ってた」
そう言うと優樹は少しだけ頬を赤く染め、うなずいて笑っていた。
「あ、うん。ありがとう、似合ってた?」
「いや、飯沼と二人で自分たちよりもイケメンって、話してたし」
ぼくは少しだけムキになって話してしまった。
「フフフ……ありがとう」
それを見て笑いのツボにはまってしまったらしく、優樹はしばらく呼吸困難になっていたんだよね。
「大丈夫か……? 優樹。めちゃくちゃ笑ってるけど」
「アハハハ、ヤバい……フフフ、ごめん。雄樹」
すると、ぼくと優樹は少し駅から離れた公園に向かった。
二人で座れるベンチに座ってから、彼女が話を始めた。
優樹は手を組んで握ったり、開いたりを繰り返している。
少し時間が経ってから、彼女は口を開いた。
「あのさ、雄樹。スラックスを履いてる理由なんだけど……」
「うん」
深呼吸をして、真剣な表情で話してくれた。
「自分の心と体にずっと違和感があってね。いままでスカートを中学の制服で着るのが、とても嫌だったんだ」
その話を聞いて、ぼくは納得した。
「そうなんだ」
やっぱりそうだったんだ。
「心は男子なんだ。めちゃくちゃ苦しかったんだ。高校生になって女子校に進学して、つらいと想像したのに、気持ちが楽になったんだ」
とても緊張していたのか、大きなため息を吐き出した。
表情はホッとしているように見える。
「教えてくれて。ありがとう」
「言っちゃった~! スッキリしたよ」
優樹は伸びをして笑顔になった。
「あと一つ、話があるんだけど……」
ほぼ同時に
「え、ぼくもあるんだけど……先に言ってもいいかな?」
と、ぼくが話したから、お互い笑ってしまった。
その話はとても緊張しながら、話を始めた。
一年間……ずっと片想いだったけど、もうここで決着をつけたい。
もうフラれる覚悟でぼくは伝えたかった。
「優樹、ずっと前から――」
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