第5話
聖凜学院の校門に着いたのは、ちょうど文化祭が始まったときだった。
「飯沼、ちょうどよかったな」
なかなか合流しにくかったので、聖凜学院の最寄り駅で飯沼と合流した。
「そうだな~、優樹のクラスはどこかな?」
「あぁ、二年六組だって、聞いてるよ?」
聖凜学院の文化祭――聖凜祭は、中等科と同日開催のためか、多くの人が来ている。
そのほとんどが女子で、男子はかなり少ない。
今年から高校が共学になったので、男子生徒もかなり少ないようだ。
「飯沼。早めに行くか」
「そうしよう」
ぼくたちは高等科の校舎に向かった。
高等科の教室はほとんどのクラスはお化け屋敷や縁日、アトラクションとか演劇系が多かった。
「雄樹! これ、すごくね?」
隣のクラスは人気アイドルの完コピのダンスをしていたり、聖凜学院の文化祭はとてもクオリティが高くてびっくりした。
まだ二年生は女子校なので、かなりレベルが高いんだ。
「え~と。二年六組がここだな」
公演時間はあと数分で始まるらしく、教室には多くのお客さんがいた。
ぼくと飯沼と一緒に入ると、ちょうどよかったみたいだ。
司会の生徒がよく通る声で話し始めた。
「本日は二年六組のファッションショーにご来場いただき、ありがとうございます。これより、ファッションショーを開始いたします」
装飾が生徒が作ったと思えない出来だし、ショーがとても楽しみだった。
照明が消されると、スポットライトが点いた。
アップテンポな曲が流れると、浴衣の子が出てきた。
「
その子の友だちなのか歓声が教室内に響いている。
青の浴衣がとても似合っていて、思わず観客と一緒に驚いてしまった。
「あ、チャイナドレスだ」
その服も手作りしているのか、めちゃくちゃきれいだ。
「キャー!
「
まるでアイドルのライブみたいで、拍手をしたりしている。
白と赤のチャイナドレスは、ワンピースタイプとミニ丈で、さっきの浴衣の子と一緒に指でハートを作っていた。
すると、曲と照明がいきなり変わり、次のシーンとなる。
次はミニ丈のメイド服。
二人は黒と水色の色違いの服だけど、こっちもポーズを取っている。
帰り際にその子に「ファンサ、して~!!」とか言われてるから、結構面白かった。
次のモデルはかなりみんながウズウズしている。
「次は男装みたいだよ!」
「楽しみ! めちゃくちゃかっこいいって」
出てきたのは男装の格好でポリス風の衣装を着ている子が出てきた。
次のモデルは高校の制服を衣装に着ている子でとても似合っている。
「クオリティー、ヤバいな……男装」
「優樹。次じゃないか?」
「まさか……」
最後の男装モデルが出てきたとき、いきなり黄色い歓声が聞こえた。
「キャアアア! かっこいいね!」
まるでジャニーズに出くわしたみたいな感じだ。
「ヤバいだろ。あのかっこよさは、俺らよりもイケメンだぞ?」
飯沼が食らいついたように、ぼくの肩をバシバシ叩く。
そこに立っていたのは、胸ポケットにチーフを入れた黒シャツとスーツにズボン、青のチェック柄のネクタイをした優樹の姿があった。
「優樹。かっこいい!」
表情はいきいきとしていて、まるですごく嬉しそうに見えた。
まるでありのままの姿を表現しているみたいだった。
ぼくは驚きのあまり、言葉が出なかったんだ。
教室にいた人たちがどよめいたのは、もちろん優樹が登場したときだった。
「優樹~! イケメンだよ~!!」
「男子よりイケメンだよ」
さっきの男装二人とメイド服の二人がやって来た。
またポーズを取るのかと思ったら、男装のメンバーがネクタイを少しだけ緩めた。
優樹がいきなりネクタイを取り、帰り際にポイッと観客の一人に投げた途端の歓声(女子の叫び)がすごかった。
「ひぇ……すご」
ぼくたちは同じことを思っていた。
――優樹の男装……恐るべし。
「優樹、すごかった……雄樹」
再び曲が変わり、ドレスの子が現れた。
まるでウェディングドレスのようで、すごいきれいだった。
あっという間に公演が終わり、いろんな衣装を見られたのが、とても良かった。
ファッションショーが終わったら、廊下で写真撮影をしていた。
一応撮影の許可証をもらっていたから、ぼくは優樹との写真を撮影していた。
「雄樹、来てたんだな」
スマホをしまうと、彼女に話しかけられた。
「うん。優樹、文化祭が終わってから、駅前の本屋にいるから……来てくれる?」
「わかった。こっちも話したいことがあるから……最後の公演にも来てくれる?」
優樹が出演する最後の公演を見に行くのを約束して、そのまま他のクラスを回ることにした。
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