第2話

 下校時刻になり、ぼくはいつもより少し遅めに帰っていた。

 文化祭の打ち上げも兼ねたカラオケ大会を開いていたため、結構遅くなってしまった。

「雄樹、じゃあな~!」

 ぼくはカラオケボックスを出ると、足早に最寄り駅の方へと歩いていく。

「お~、また明日ね!」

 改札を抜けて帰りの電車を待つためにホームに立つと、暇になったので少しだけスマホを見た。

『雄樹、帰った?』

 ちょうど少し前に優樹から、LINEが来ていた。

『まだ。ちょうど、電車に乗るところ』

『その電車に乗ってるよ?』

『マジ?』

 心臓がドキッとした。

 それに乗る電車が同じになるのは、めったにないことだったから余計に嬉しくなった。

 優樹は文化祭の準備とかを手伝っていたから、六時まで学校に残っていたらしい。

 ぼくの高校の文化祭は、先週の土日に終わったばかり。

 それには優樹も私服で来てくれたのは記憶に新しかった。

 今日は片付けと打ち上げをしていた。

 優樹の文化祭はあと二週間後だと聞いてるし、結構楽しい文化祭になるはずだ。

 電車は時間通りにやってきた。

「間に合った!」

 家族に連絡済みだったので『これから帰る』とLINEに送信してある。

 誰かが見たのか既読もついていた。

 安心して乗ると、目の前に優樹が座っていた。

 めちゃくちゃびっくりして、心臓がドキッとして、そのまま鼓動が速くなる。

「雄樹、お疲れ~」

「お疲れ~、優樹。文化祭の準備、大変?」

 平常心を保っているけど、本人はバレバレかもしれない。

 お互い疲れの色を隠せないまま、そのまま話をしていた。

「全然。モデルは……服を作る人のを試着して動いてみるってことをやってるんだよ」

「男装か……みんなからキャーッって、叫ばれそう」

 ぼくが考えているイメージを話してくれた。

「まぁね……そうだね、男装の場合はキャーッて言われるよね」

 少しだけ苦笑いをしている。

「聖凜学院は今年から女子校から共学になったんだ。去年までは女子校だったんだ」

 それは母さんの親戚(従姉妹いとこ再従姉妹はとこ)が何人か通っていたから、知っていたんだけどね。

 聖凜学院は小学校から大学まであるから、エスカレーター式で進学するという。

「といっても、高等科はほとんど外部進学するけどね、自分もその予定」

 彼女は高校から入学しているらしい。

「優樹……女子校って、どんな感じ?」

 優樹は少しだけ黙ったままだった。

「うーん……自分では結構、楽しいよ?」

 そう言っていたけど、表情はとて苦痛を訴えているかのようだった。

「大丈夫? 顔が思い詰めてたから」

「あ……たまに、なっちゃうんだ。めちゃくちゃ怖かったでしょ?」

「大丈夫だよ。文化祭で疲れてると思うから」

「思い詰めてるよりは、悩んでいるって言った方がいいのかな? うちはみんなと……同級生とは全然違うからさ」

 ぼくはなんとなく、言いたいことがわかったように思えた。

「雄樹、また明日ね! 七時六分発の電車に乗ってみて。乗ってる来るから」

 そう言って、電車を降りていった。

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