第11話ラプンツェルへの、疑惑。
「やー、君たちにちょっと聞きたいことがあってね。悪いんだけど……時間良いかな?」
「申し訳ないのですが、買い物が終わり次第帰宅予定ですので」
「まーまー。そう言わずにさ。美味しいお茶やお菓子もあるよ?」
「間に合ってます」
「んー、じゃあ情報提供ってことで報酬だしちゃう!」
「今のところお金に困っておりません。困ったこともありませんので、結構です」
「――ハヤ、いい加減にしろ」
「えー、でも」
「ハヤ」
「…はーい。えーと、そこのおじょ、じゃなくてお姉さん?」
「……」
「まー、そう緊張しないで。ちょーっと聞きたいことがあるだけなんで」
こりゃ、逃げても無駄に事を大きくしてしまうだけ、かな。
取り合えず、トトを下がらせてユユを背後へ。
「あの、これは強制なのかしら」
聞きながら他にも声をかけられている人は居ないか視線を動かしてみるも、どうにも私たち以外にはいないらしく、目立ってきているのがわかる。
「そうだな、強制ではないが、実質そのようなものだと理解してくれて良い。…少し外からの亜人だからこそ聞きたいことがあってな」
「それなら、用がすんでからでも構わないかしら?暗くなる前に済ませたいことがあって」
「いや、悪いが今話を聞きたい」
何だか分からないけど、融通の聞かない男だな。
でもま、このまま問答してても仕方ないし行くかな。
「分かりました。それじゃあ、」
「あぁ、こっちだ」
そのちょっと偉そうな口ぶりや、広い背中、厳つい顔つき。すべて嫌になってくる。おまけに私たちを挟み込むように背後を歩くとさっきの兵士、たしか、ハヤと呼ばれていたけど彼はどちらかと言えばヒョロイ遊び人風。個性的だな。
なんて、考え事をしながら歩いてたどり着いたのは門のすぐ右隣にある小屋。と言ってもレンガ造りのしっかりした兵士さんの休憩室みたいな建物で、室内にはドラマで見た警察の取調室的なものもあったりして案外面白いかも。
☆
――ギシリ
「で?」
上司らしき男はゆっくりとした仕草で木の椅子に腰掛け、私たちも反対側を進められたので大人しく席につく。
すかさずハヤと呼ばれていた兵士さんがお茶を出してくれたけどトトに横目で視線を送られたのでま、手は出さずにおいた。
「えーと、まず名前と種族と年齢と…」
「…ツェルよ。この子たちはトトにユユ。妖精族で、全員百は過ぎてるわ」
「えっ!?妖精!?しかもっ、おばっ!…と、ハハッ。えっと、じゃあ、本題なんですけど」
ちらり。
ギョッと目をむいて私を見たハヤ兵士と、表情には出さず言葉を繋いだ上司。
なんだか聞き捨てならない言葉を聞いた気もしたけれど、まぁ、今は許す。
「ふむ。そうなると、随分年上となるな。先程までの非礼を詫びさせていただく。そして、我々には無い経験もあり、知識も深いと、そう取らせてもらおう。その上で問いたい。―――貴女方は、我が街の搭を、知っているか」
上司は小さく謝罪を告げ。
さっきまでとは違う。気がつけば、小さな子供相手の大人らしい態度を改め、一転し教えを乞おうとする言葉や空気へと、室内がガラリと変わっていた。
「…搭?」
あれ。塔って、まさか、ね。まさかまさかの私の塔?
「古い搭だ。残っている書類で確認できる限りでは二百年は前より存在している。持ち主は不明だが、我々が立ち入るを許さぬ魔法の効果が切れないことを考えるに生きているのは間違いない。それを踏まえるに、持ち主は長命な亜人だろうと検討はついている。もちろん、持ち主が見つかることが大前提だが、その情報一欠片でも構わない。何か、知っていることはないだろうか」
落ち着いた声音、知性の光る瞳を見せる上司。
けれど、その背後に控える部下、ハヤ兵士のギラついた眼差しに戸惑う。
「…いえ、分からないわね」
「それでは仲間内で搭が話題になることは?」
「ないわ」
私の仲間なんて今のところトトとユユしかいないし。て言うか、そのギラギラした目で見るのやめて。
すると、私の心の声が届いたのか。控えていたはずのハヤ兵士が首を伸ばし口を開いた。
「実は数日前何ですけど、その二百年モノの搭の古ぅい煙突から煙が昇ったんですよねぇ。…おかしいと思いません?誰も住んでないのに」
ハヤ兵士はなんか知ってんじゃないの?的な眼差しと口調でこちらを攻めてくる。
「そう言われても…」
それは確実に私の塔だわ。間違いない。しかもそれ、初日の暖炉使用が原因…言えねー。
「あの、その塔の持ち主を探している理由は?それくらいは教えていただけますよね」
押し黙る私に代わり、トトへ選手交替。
「…へぇ。じゃ、知ってるの」
うーん。どうも、部下であるハヤ兵士は私達を疑っている様子。なにも悪さはしてないのに。
「そうは言っていません。ただ、なぜ、その者を探しているのか気になったもので」
「そーれは、ちょーっと話せないかなぁ…」
「力だ」
「は?」
「ちょ、小隊長!」
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