第8話:凖備好了(準備完了)

 先輩がぱぱっとSIMカードの手続きをしてくださった。すごい。ここまで話せるようになりたいなと思いながら有難く頼らせてもらった。本当に泣きそうな程安心した。これで電話番号もあるし助かる。頼れるものは頼るべきだと自分に言い聞かせる愛美だった。




 以前エージェントから貰った資料を元にエージェントのオフィスに向かう。エージェントのオフィスは小さなビルの一室だった。部屋に通され、日本語が流暢なスタッフから資料を貰う。地下鉄の乗り方やSIMカードについて、有料オプションの資料等だった。現地生活のガイダンスというが、原則トイレに紙が流せないだとか事前にわかる情報ばかりだった。ただエージェント不信に完全に陥ってた分、きちんとしたスタッフがいることにはかなり安心できた。


「コノ人ガ今日語学学校ニ案内スル人デス。日本語勉強シテルカラ教エテアゲテネ!」


「こんにちは。私の名前は大瀬戸愛美です。東京から来ました。」とりあえず軽く中国語で挨拶をする。紹介された身長の高い男性ははにかみながら何度か頷くだけだった。




 その人と地下鉄で語学学校に向かう。会話がない。気まずい。語学学校への行き方も指さしだけだし、中国語で話振るべきなのかと愛美は考えたが、そもそもそんな中国語流暢ではないし困ったなと思っているうちに語学学校の最寄り駅についた。とりあえず最寄り駅から語学学校までその人についていく。本当に変な所に連れていかれてないのか心配だ。15分ぐらい歩くと語学学校が見えた。語学学校の中は愛美からするとアジア系の人が多そうであった。話し方的にはベトナムかタイかその辺だろうか。


 エレベーターに乗ると何故かガイダンスの階を過ぎる。寡黙な高身長のスタッフも焦りの色が出た。偶数階奇数階で止まる場所が違うのだなと思い愛美はエレベーターの上の方を見る。日本のメーカーの名前がある。こんな所で日本の名前を見ると思わなかったなと思っているとガイダンスの上の階に着く。そのまま階段で会場に向かうとまだ人はほぼいなかった。送り届けたスタッフはいつの間にか消えていた。学生証と資料をもらい最前で話し込んでいる男女と距離を置き座る。




 語学学校は本当にいろいろな国の人がいるようだ。イスラム教の人も見かけた。友達出来るかなと少し楽しみになってきた。




 準備万端。やっと始まる。

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