第7話:日本人們(日本人達)

 愛美は現地に日本人の知り合いが全く居なかった訳では無い。愛美の大学は中国語専攻の人もおり、現在駐在員として台北に住んでいる人も何人かいた。また現地で働いている卒業生もおり、大学のコミュニティーが存在した。教授経由で、台湾に交換留学の経験がありそのコミュニティーに属していた先輩を教えて貰っており、その先輩から向こうに連絡はいっている。しかし日本人と交流するために台湾に留学する訳では無いという信念から連絡出来ずにいた。そんな愛美に連絡が来ていた。

「もう台北着いた?何かあったら相談してね!」

 久しぶりに正しい日本語を見た気がする愛美。その優しさに甘えるべきではないという気持ちと、携帯が繋がらないだけで大変なことになっている事実の狭間で揺れていた。

「携帯のSIMカードが買いたいので、日本語が通じる店舗分かりますか?」契約を中国語でする自信は皆無だ。Mの店員さんの言葉が聞き取れない愛美にあるわけが無い。しかしエージェントは信用出来ない。

「携帯使えないの?一緒に買いに行こうか?」

 天使か。それとも神か。いや仏か。なんでもいい。現地で働いている人が話せなくないわけがない。きっと台湾の携帯のシステムもよく分かっているだろう。

「すみません。お願いします。」

 甘えてしまった。なんとも言えない罪悪感に苛まれる愛美。これで大学のコミュニティーに属することになったし、愛美は恩を感じてもいるため、参加しないわけにいかなくなった。だが何度考えてもエージェントは信用出来ない。

 愛美が台湾を選んだ留学は幾つかあるが、1つは北京周辺と上海に沢山同じ大学の学生が交換留学していたからだ。そこは大学の先輩後輩でよくご飯に行っている。それは先輩や同期、後輩のSNSから分かっていた。半年しか留学しないのに日本人と絡む時間はない。だが、利用するだけして参加しないのは申し訳ない。

 そう愛美はぐるぐると悩みながらその日は寝た。

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