第2話
「神様っていう、そんな存在をあなたは信じてるかな?」
その少女は僕の目をじっと見つめて、そんな問いを投げかけた。
「えっと……。神様がいてほしいなと思ったことはあるけど、実際に見たことはないからね。その……。もしかしたら君が神様だっていうこと?」
「ああ、ううん。そうじゃないの、私はたんなる
「つかい?」
少女は僕の言葉に頷いた。優しい笑顔をまとったままで。
「あなたたち人間が神様と、そんなふうに思うような存在はね、この世界に実在するの。あなたたちが住む、この世界にね」
生前の僕がこんな話を聞いたら近づかないで、すぐに逃げていただろう。だけど今はどこにも行くあてもなく、それに不思議と、この子の言葉に惹かれているかのように聞き入ってしまう。
そのまま話は続いていく。
「あなたも聞いたことがあるでしょう?人生は
だけど……、本当はね、私たちは人の一生のプラスとマイナス、幸と不幸はバランスが取れて終われるはずにしているの。本当は……」
急に泣きそうな顔になりながら、その子はいまだにじっと僕の顔を見つめてる。
「ほんの少しだけだけど、幸せが勝るような、幸せな人生だったと思えて死ねるような、そんな命の終わり方をしてほしいから。だから私たちはあなたたちが住む世界にこの場所から降り立っていろいろ手助けをしているの。危険な事故や事件が起きそうになったらそれを未然に防いだり、少しでも被害を減らそうとしたり。
だけど私たちや、その上も、すべてが万能じゃあないの。間違いもするし、力が及ばないこともある。必要悪だと思って見逃したものが、予想外の結果になってしまうものもある。
例えばね、人間が感じる1秒を20秒くらいになら私でもできる。だけどどんなに頑張っても時間は戻せない。
他にも、人の体が真っ二つに、上半身と下半身に分かれるくらいのダメージをうけても、すぐになら治療できる。だけどすでに絶命した、死んだ肉体を復活させることはできない。やり直しがきかないの」
とうとう彼女は、きれいな顔を歪ませて泣き出してしまった。
「ごめんなさい。あなたが死んでしまったのは私のせい。私がまだ未熟だったから。あなたの命は肉体から離れてしまった。もうどうやっても生き返らせることはできないの」
頭を深く下げている。顔から落ちた涙が白い地面にすたすたと落ち続けているのが僕にも見える。
「本当に……、ごめんなさい」
その懺悔を聞いても、頭の中ではどうやっても、うまく考えがまとまらなかった。
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