第9話 荷馬車と黒猫


 おばあさんは街へ出かけました。牛乳を買うと店主が家まで荷馬車で送ってくれると言うのでお言葉に甘えることにしました。



 ヒッヒーン、ヒッヒーン、タッカ、タッカタッカ、タッカ


 ガッシャ、ガッシャ、カシャン


 荷馬車を引く馬の鳴き声と荷馬車が揺れる音がします。


 「ミャーオ」


 どこからか鳴き声が聞こえてきます。馬の鳴き声ではありません。荷馬車の音でもありません。

 

 おばあさんは荷馬車の中を一周見渡しました。


「はてね?なんだろうかね。」


 もう一度見渡しましたが、何もみえません。ミャーン。微かに聞こえてきます。おばあさんは、荷のまわりを確認し出しましたが、見当たりません。


 「ミャーオ。ミャーーン。ミャーオ。」


 早く見つけてごらんよ、鳴き声は遊んでいるように聞こえます。


 「まあまあ、いったいどこかしらね。ふふふっ。」


 おばあさんが、荷馬車の後ろに乗っている牧草を見つけました。店主が馬にあげる餌です。


「ここは怪しいねえ。ふふっ。」


 おばあさんは牧草の裏に回りました。


「ほら!みつけたわ!」おばあさんはとても嬉しそうです。


「ミャー。」


「あれま、またアンタかい。」


 そこに居たのは街で見かけた仔猫でした。


「やれやれ、こまったねえ。あんたはどこからきたんだい?親はきっと心配しているよ。」


 おばあさんの心配を他所に子猫は遊んでいます。


「まあ、店主に頼んでおけばいいだろう。この荷馬車はまた街に戻るのだから。」


 おばあさんは優しく微笑みました。

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