第28話 武器というには不安

「なんだ突然。」


そう声を掛けられ、その声の主へと顔を移した伸也は体が固まった。

その声の主は、思ったよりも小柄だった。言い方は悪いが、ちょっとふくよかな男性を70パーセント凝縮したみたいな。


・・・

・・・


それから数分の間お互い無口で固まっている状況が続いていた。

実際は伸也が固まっているだけで武器屋のおっさんはただ単にこちらの返答を待っているだけだったかもしれないが。


「ここで武器が買えると聞いたんです。」


体を固めていた伸也は沈黙の空気の悪さに耐え兼ね、やっとこさ口を開いた。

伸也の返答に対して、少し考える様子を浮かべていたおっさんだったが、何かを思い出したように口を開いた。


「あーこの店を勧めるなんてあいつぐらいしかいないか・・・

わかったよ。あいつの案内なら悪いやつじゃないだろ。何をお求めなんだ?」


顔は相も変わらず仏頂面だったが多少雰囲気が和らいだように感じた。


ーーー

といって買い物を許可?してもらったものの伸也にはどれが扱えるのか、どうやって振るうのかわからないものが多かった。そのため、ドワーフのおっさんに選んでもらうことにした。

自分でも使えるようなおすすめ武器を。なんて言ってみて、どんなものが出てくるのかななんて想像を膨らませてワクワクしていると、無言で差し出してきたものは短いナイフだった。


「これは?どうやって使うんです?」


そんな風に若干目を輝かせながら聞くと、そのドワーフは自身に生えている長いひげを触りながら、獲物を解体するナイフなんてことをぼそっと小声で言ってきた。


「え?」


ここから先は長い悶着があった。というよりかは普通の人ならば数分で済むような内容なのだが、お互いに”人と話すということが苦手”とすることにより、うまく言葉のキャッチボールができないため、目的地まで大回りをして、ほんとに人に見せるのも恥ずかしいぐらい大回りをして答えを得たのであった。以下に聞いた内容をまとめる。


1、店の壁に見本品としてかけらている数多あまたもの西洋剣らしきものは扱いが難しく、うまく使いこなせれる者も一握りらしい。


 そんなものをなんで店の看板商品のように店の店内に置いているのかといえば、単純な見栄のようだ。そもそも武器屋なんて様々な街を頻繁に行き来するような者や冒険者にしか需要のないものである。そのため、どの武器も一品ものでいわば一種のブランドのような扱いのようだ。

 実際伸也の一番近くにあった刀身がまっすぐ長く、両刃になっている、いわゆるロングソードなんて呼ばれているものは、伸也の手持ちのお金を全額出して買えるかどうかみたいな値段設定らしい。


2、まず伸也がもやしみたいなもやしのため重くて持ち運びですらきついらしい。


これはもうしょうがないとしか言えない。実際伸也は運動をする機会なんて言えば学校の体育ぐらいで、クラスメイトだったやつらと比較しても筋肉がないほうであるというのもわかっていた。


ってことで候補として残ったのが、いや候補として何も残らなかったためといった方が正しいのだろうか。このあたりの一家に一本はあるらしいナイフだった。ナイフなんて言われて渡されたが、見てくれはドラマとかでよく見かける、メスという印象だった。刃が5㎝ほどで、持ちての部分として、木でできた柄で覆われているという形だろうか。全長で10㎝~15㎝くらいだろうか。どちらかといえばペーパーナイフのほうが近いかもしれない。

他になんかないのと言いたかったのだが、ドワーフのおっちゃんはそれ以外ないと言いたげに腕組みをしてこちらをじっ・・・と見ていたためしぶしぶ(またこのおっちゃんと不出来なキャッチボールをしなければならないと思うと億劫になったという気持ちもある。)


広い道路に戻ってきたころには、太陽がてっぺんを超えていた。(武器屋では結局ナイフ一本だけ買った。サービスと言いたげな顔で腰に皮でできた小さな鞘を付けられ、そこにナイフを収めた。落ちそうで怖い。)

のんびり散歩でもして、あたりを散策してみたいという思いがあったのだが、ジャージ姿で片手にスニーカーを持つもやし男に興味?を持ったのか、大通りを一歩進む度に人の目を引いた。

それがどうしようもなく恥ずかしくて、昼食なんてそっちのけにして速足で街で一番大きい建物に向かうのであった。



 

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