第27話 自分の装備。って言えるのかな
「おっとここがあの噂の」
伸也は見知らぬ宿屋(26話冒頭参照)を後にしたのち、あの居酒屋(26話中盤参照)にいたおじさま(名前はスタンというらしい。)から聞いた店を回っていた。スタンが紹介してくれた店は、どこも親切に対応してくれた。ように思える。
え?お金はどうしたんだって?あーなんか気づいたらポケットの中にお金が入ってる麻袋が入ってたんだよね・・・スタンに聞いてみたら大体2~3か月は働かなくても食べていけるくらいのお金の量だったみたい。すごいね異世界。スタートボーナスみたい。
ーーー
始めに行ったのは防具屋らしき場所だった。大通りに面していたそのお店は、木彫りのアーマープレートのような形をした看板のおかげで楽に見つけることができた。
藍色ののれんをくぐると、そこには様々な種類の、そして形の"装備"がそろっていた。
装備に対しての知識を持ち合わせていないため、店員さんに予算を伝え、適当に見繕ってもらった。
それじゃあ装備を上から見て行こうか。
上からヘルメット・・・みたいなもの。
これは革製なのか麻製なのかは正直わからないけど見てくれはターバンである。
しかし、ターバンといえば長い布を頭に巻くというイメージがあるが、これはぼうしのように上からかぶるタイプのものだった。
店員さんによると、素材はほかの防具に使った切れ端を企業秘密ののり?のようなものに着けて作ったものらしい。かぶってみたところ、ずっしりとした重みはなく普通に帽子をかぶっているような感覚になった。
次は鎧・・・っていっていいのかな・・・
候補として出されたものをいろいろ試してみた。
普通の鎧とか、革の服とかそうゆうよくファンタジーであるようなものを試着してみたのだが、大きすぎたり、重すぎたりして装備できなかった。
てことで気づけばT-シャツみたいなものが手に渡っていた。さすが魔法のある世界というかんじで、ただのT-シャツではない・・・らしい。
ただ・・・問題が一つある。それは柄だ。
一言でいうのであれば、派手!その一言に尽きる。なんか店員さんによると、余った布の切れ端を洋服型にあてて、帽子にも使った企業秘密ののりでくっつけたらしい。
そこまではいいんだが、その布の切れ端が大問題。個々の生地の色が派手過ぎた。それゆえに出来上がったシャツはというと、12色相環みたいな、レインボー柄になっていた。
絶対目立つじゃん。でももうこれしかないって言われてしぶしぶこれにした。
もし、冒険に行くことがあったら、その時に着ればいいや。
そんな、半ば現実逃避ともいえる思いと共にひとまず来ていたジャージのポケットに突っ込んだ。
次はズボン。これは元の服装とあんまり変わらない。色もいい感じのクリーム色。
靴も問題大あり。まじで歩きにくい。
普通履いているようなスニーカーとかじゃなくて、革または木製。一応歩きやすさを考慮して革にした。見た目は先端がとがっていないタイプの革靴。ちょっと変わってるのが、脛あてみたいな、長さがある革があてがわれてること。見てくれは、革でできた長靴みたいな感じ。店員さんに聞いてみると、足首に絡みついてくる草や魔物が足をすくおうととして足を狙ってくるやつがいたりするから長くできているということらしい。いろいろあるんだね・・・
この長さがゆえに普通の革靴よりも歩きにくいったらありゃしない。
この靴は靴擦れしないようにってことで履いて歩くことにした。
「ありがとうございました~」
そう言いながら防具屋を後にする。
今の恰好を改めてみてみよう。手にはさっきまで履いていたスニーカーが握られている。
下からさっき買った革靴みたいなやつ。それ以外はジャージである。
なんか客観視すると農業体験をしに来た高校生みたいな恰好だなって思う。
この世界でまだ鏡ってものを見たことがないから自分の姿がはっきり認識できてないのが唯一の救いというかなんと言うか・・・
まあ歩いてるだけで周りからの視線が痛いんだけどさ。
さあ異世界で一番のお待ちかねといえる武器の番だ。
「すみませーん。ここで武器が買えると聞いたんですけど」
ーーー
伸也は裏通りに来ていた。
さっきまでは、まだ人の活気があって朗らかな雰囲気だったのに対し、一歩裏通りに足を踏み入れるだけで暗く、まだ昼間なのに夜をほうふつとさせる雰囲気だった。
お目当ての武器屋は唐突に現れた。というより、そこだけ周りよりも温度が高かった。物理的に。
さっきまでは梅雨の時期のうず高く積まれた布団が入っている押し入れの中みたいなじめじめさだったのに、そこだけは太陽の陽光のように、とは言いすぎだけど押し入れに除湿剤とヒーターをつっこんだみたいな生暖かいような不思議な環境がそこにはあった。
スタンから聞かなかったら絶対わからなかった。
ーーー
「なんだ突然」
そう言って出てきたのはザ・ドワーフみたいな見た目のおっさんだった。
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