第29話 街で一番大きい建物
それは街の一番端、街と外界とを分ける門に一番近い場所にあった。
昨日スタンと出会った居酒屋と同じように入り口の扉は観音開きの木製の扉である。
スタンみたいなイケメンが働いている職場は、人の出入りが少ない格式が高い場所だったらどうしようなんて杞憂を抱いていたりもしたのだが、実際は真逆だった。つまり、人の出入りの非常に多い場所だった。否、人の入りが非常に多い場所だった。
ーーー
数分もの間、ぽかんなんていう表情を浮かべながらも安堵した気持ちでいたと同時に困惑もしていた。おしくらまんじゅうかのようにその建物に詰めかける人たちは、どの人も鼻息荒く、目を輝かせていたからだ。
そんな情景に対し、複雑な心持で立ち尽くしていると後ろから、あ、あのーなんて声をかけられた。
てっきり邪魔になっているのだと思い、すみませんという言葉と共に声のした方向へ向く。てっきりそこには目をらんらんと輝かせる人がいたのか、と思ったがどうやらそうではないようだ。
目線を下に向ける。
なぜ下げるのかと言われれば単純に自分と同じ目線には声をかけてきた主なんていなかったからだ。
まず初めに目についたのは耳だった。というのも頭のてっぺんのあたりに2つ、ピンと立ったもふもふのものがくっついていたからだ。
そして身長はというと低かった。まるでこどもである。まるで、なんて不定的な言葉を使ったのは、伸也自身が所謂世間一般で言われるところの獣人を始めてみたからだった。
ちょこんと小首を傾げていたこどもが、聞こえていないと思ったのか、もう一度あ、あのなんて言った後に少し間をおいて、興味深いことを言った。
「あなたも今日入学の人ですか?」
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