第16話 ラブコメってこんなんでしたっけ?
「ちょっと着替えるからここにいて。」
自分はこの言葉を
なんか思い付きで考えてみる。じゃあ言葉を分けてみよう。『ちょっと着替える』これは先ほど神達との運動(?)で汗をかいたから着替えたい。ということだろう。『ここにいて』はまた神から追いかけられることを気にしての言葉だろうか。言葉を組合わせる。そして解釈する。汗をかいたから着替えたいがまた神たちから追いかけられたら面倒だから見張っておけ。ということなのだろう。
半ば自分を認めさせるように考えを丸め込ませる。
と考えている間にゆんが制服のスカートに手をかけ…
「っておぉーい」
急いで後ろを振り向く。出来れば見てたかったとか心がしゃべっているがもし見ていたとしたら、後に話しかけるのが気まずくなってしまう。そんな気持ちを抱いていた。
「おっ紳士だね~」
後ろからゆんが話しかけてくる。
「き、きゅうに着替え始めないでくれる?」
抗議の声をあげる。それに対してゆんはあっけらかんとした声でこう言った。
「ごめんごめん。じゃあ今度から着替えるときは伸也に言うから」
「よろしくね」
この言葉によって伸也はやきもきすることになるのだがそれはまた後の話で…ひとまず伸也は神たちが近寄ってこないかだけチェックする。意識を目に集中させて、他のことを考えないようにしていた。なぜかって?そりゃあさ、後ろからゆんが着替える音がするだもの。
『意識したら負け。意識したら負け。』そう念じつつ回りを注視していた。いや正式には注視していたかった。と言うべきだろうか。
「ちょっと手を前に出して」
耳元でささやかれた自分はきっと数センチ飛び上がっていただろう。辺りを注視するあまり、ゆんが近づいてくる気配を全く気づけなかったのだから。
「だからー手を前に出してって言ってるでしょ」
耳にこそばゆい息がかかる。めちゃくちゃくすぐったい。ひとまず言われたことにしたがって、手を前に出す。そのとたんに白い手がにゅっと現れたかと思うと、手の上に、畳まれていない制服がばさっと音をたてて落ちてくる。
「地面に置くと汚れそうだから持っててあっ嗅いだりしちゃダメだからね!」
「いや嗅ぐかっ」
「え~ちょっとくらい迷ってくれてもいいのに。」
なんかちょっと悲しそうにゆんがしゃべっている。
てか嗅ぐくらいだったら最初に後ろなんて振り向んわ
そうツッコミたかったがぐっと押さえ込む。さすがにこれを言ったら変態扱いされそうだからな。
「そういえばゆんのステータスって結局なんだったんだ?」
ひとまず違う話題を出すことで、話をそらそうとする。
「むー話をそらしたなー」
きっと膨れっ面をしているんだろうなでも話は戻さないぞ。
「神たちもこんなのはみたことない。とかバグだとかいってたけど?」
最初は答えなかったが少し待ってみると、おずおずと語り始めた。
「なんかね私のステータスは特殊型みたい。使う武器によって、ステータスが改変されていくようになってるみたいなの。」
つまりまとめると、ゆんが剣をもってレベル上げをすれば、攻撃力が上がり、杖を持ってレベル上げをすれば魔力が高くなったりと、その武器によって上がるステータス値が変わるということらしく、ついでに使えるようになるスキルも変わってくるのだとか。
例えるなら、RPGによくある転職みたいな感じであろうか。
「さすがの勇者だね」
「そういう伸也もなんかすごいスキルが一杯使えそうじゃない。」
そう何気なく放った言葉に対し、ゆんが申し訳ないと思ったのかフォローをしてくる。
「まあそのスキルを使えるようになるかは自分次第なんだけどね。」
なんか誉められてこっぱずかしい気持ちになり、気持ちを紛らわせるために自分の手の上にいたゆんの制服をたたみ始める。
「ねぇスキルを使えるようになるには自分次第ってどうゆうことなの?」
「自分も聞いた(技術神に)話しになるんだけど、スキルを取得するにはレベルはもちろん自身でその技を習得するための何かアクションを取らないといけないみたいなんだ。
例えばさっき自分がこの争いをやめようと叫んだでしょ?それが原因となって、遠吠えってスキルを習得したんだ。」
「あっそれなら私にも覚えがあるよ?さっき神様たちから逃げなきゃって思ったときに【疾走】を習得したの。」
「じゃあお互いスキルを1個ずつ習得したんだな」
「そうみたいだね」
そんな話をする中で、ふと手に握る制服に違和感を感じていた。
『ゆんの制服ボロボロだな。さっきの神たちの鬼ごっこの時に破いたのかな?』
そう思う。そしてさっきから後ろでは着替える音が聞こえずゆんの声が聞こえていたため、着替えが終わったんだろうと判断し、後ろを振り返り制服について尋ねようとゆんを見る。
「え?」
目に映るのは、ジャージを持ちながら、下着姿で立っているゆんの姿があった。それだけならまだ悪態をついて、後ろを振り返る余裕があった。でも伸也は振り返った顔をもとに戻すことができなかった。だって
ゆんの体はアザだらけだったから。
まるで激戦を渡り歩いた勇者のように、ボロボロだったから。
「ん?どうしたの?私なにかおかしいところある?」
もしゆんの顔を見ていなかったら軽く受け答えしていただろう。でもゆんの顔は、今にも崩れそうなほどに苦痛に歪んでいたから。それはまるで、声を発する人と、感情を左右させる人が別であるかのように・・・
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